2011年1月5日水曜日

冬休みホンヨミ③【黄】ヒューマニティーズ 教育学

ヒューマニティーズ 教育学 
広田 照幸著

①教育の目的
帯の裏にこのような事が書いてある。「ポストモダン的な価値の相対化の地点から『教育の目的』を棚上げにしてしまうのは『教育のシニシズム』を生んでしまう。......誰をも屈服させるような強力な『教育の目的』を、ある社会が持ってしまう事も危ない。2つの極の間で『教育の目的』をどう論じる事ができるのか。これからの教育学に求められているのは、これである。社会が多元的であるにも拘らず、教育はある体系性や統一性をもって組織される必要がある。この難題に教育者がどう取り組むのか、という事である。」まさにこの本のコアとも言えるだろう。近代に入り社会は日々大きな変化を遂げている。経済のグローバル化や次々と浮上する地球規模的な課題。これらは今後の教育のあり方にさらなる変容を迫っているに他ならず、ではどこからどう働きかけていくべきなのかを考える1冊なのである。

②教育が歩んできた軌跡
19世紀末に登場し、20世紀の教育学の本流となった「進歩主義教育運動」。この動きが3の「教育の成功と失敗」で展開されていた。この運動のベースには「子供一人一人が違っているから、それに応じた教育をするという革命的な考え方があった。そしてその主張に応じて登場したのが「全ての子供にバラバラな事をさせ、同時に、どの子も同じ程度の学習レベルに引き上げるという教授技術」であった。これらの動きが公教育制度の登場と相まって教育の形成に大きな影響をもたらしたのは言うまでもない。そしてその後1980年代から始まるポストモダン論によって、それまで積み上げてきた教育体系は無惨に崩されていくのだが・・・。

③教育学に必要な事
そのひとつは当然本をじっくり読む事だ。5ではその更に先を行って「何を読むべきか」そして「どう読むべきか」が言及されている。講義や演習で得る知識は確かに大事なエッセンスの一つだがそれらは断片的であり、かつ限界があるのだ。自分自身で自発的に広い読書を心がける事、基本と言えばそれまでだが、だからこそ胸に刻むべき教訓なのかもしれない。

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