2011年1月9日日曜日

冬休みホンヨミ③<矢野>

『たった1分で人生が変わる 片づけの習慣』小松易著(中経出版)

金ゼミとは直接的に関係はないだろうが、先ほどの「プレイフル・シンキング」と関連して、自己啓発本・ハウツー本として思うところがあったので、書評として挙げさせていただく。一部内容を悪く言っているように見えるかもしれないが、これを書く目的としては、どうしてハウツー本がどうして簡単にヒットし、本屋で平積みされてはブームが過ぎ去り掃いて捨てるほど日本中に溢れるという社会現象が起るのかを本の内容から考えてみたかったから。
一つ大きく感じたことは、当然かもしれないが、ハウツー本というのはたいてい一つの形式をとっているということ。全体の流れを順を追ってみていきたい。
序章:この本(または内容)のすごさを盲目的に評価する、そしてその実行がいかに簡単かを根拠なく主張する。この時に「あなた」という代名詞を使用して、なるべく読者が「自分」に置き換えられるようにもっていく。
前半:序章の具体化。この本の目的遂行がどんなに素晴らしいことか、読者の現状を変え得るかを主張する。使われている手法を例として挙げたい。「~でも○○できる」→「~できないと○○できない」の置き換え。この本を引用すれば、初めは筆者の体験をもとにして、「(旅行先で感じたこととして)荷物や持ち物が少なくても充実した日を遅れた」と語っていたのにいつのまにか同様の文脈で「荷物が少なくないと充実した生活を送れない」となっている。先ほどの詭弁論理学の記述を引き合いに出すのがちょうどよい。これこそ「詭弁」である。このような中で、情報リテラシーを欠いた読者は鵜呑みにしてしまい、「これ(本の内容)を達成しなければ」というマインドセットが簡単に起る。そして後半の実践方法の紹介をさわりの部分だけ語る。
後半:実際のやり方。こう考えるとここがこの本のコアであるはずなのに非常に分量として少ないことに気づく。
だいたいこのような順序で書かれている。
しかし読み終わってみると、著者の主張に浸かった自分がいるのである。この後半部分の本質だけではここまで染まることもなかっただろう。前半の洗脳はすごい効力だ。この洗脳がいかにうまくできるかがハウツー本の「効く・効かない」「役に立つ・立たない」をつかさどっているのかもしれない。ただ、この状態に陥るのもつかの間、すぐに生活の忙しさにまみれて忘れてしまう。ハウツー本の効力には使用期限があるのだなあと感じる。これが冒頭に書いた社会現象を生み出す要因だろう。今回は「片づけ」というテーマだったからつべこべ言わずこの主張に染まるに越したことはない(片付けが正しいことは自明の理だから。)ただ、二項対立になりうるテーマだった場合には注意が必要である。思考回路を著者が自分のそれと同じくするために本の上に道筋を書いてしまっているからである。読んだ後冷静になってしまえばハウツー本の意味がなくなってしまうわけだが、それなりのリテラシーが読者にも必要だろう。

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