2011年1月7日金曜日

冬休みホンヨミ① 『グーグルに異議あり!』 【岡本】

『グーグルに意義あり!』明石昇二郎

「グーグルブック検索和解事件」…金ゼミ生にはなじみ深いと思われるこの問題。Googleが著作権者に対して持ちかけた「和議」を彼らの多くがなすすべもなく受け入れる一方で、果敢にもGoogleを相手取って訴訟を起こしたあるルポライターの話。誰もが文句をいいながらもGoogleという大企業による横暴に目をつぶる中で、実際に「個人で」行動を起こした人は極めて珍しいということで読んでみた。

①狡猾なGoogle
なぜGoogleは「図書館プロジェクト」という形で、賛同してくれる図書館の蔵書をスキャンさせてもらう代わりに図書館にもスキャンしたデータを渡すなどという、些かまどろっこしい方法を取ったのだろうか。Googleほどの大企業なら市販の本を根こそぎ買い漁ればいいではないか―。その答えが、ゼミでも扱った「フェアユース」に関わってくる。要は図書館は「経済的事由に関わらず出来るだけ多くの人に本を読んでもらう」という社会的責務を負った公共施設であり、その蔵書であればいくら世に出回ろうと「公正な使用」の範囲を出ないという主張をGoogleがあらかじめ考えていたからなのだそうだ。複製権の明らかな侵害を無茶な理論で乗り越えようとする、また訴訟が予想される案件に事前に手を打っておくGoogleの狡猾さが伺える。

②事業が第一、被害者はゴミ以下?
本文中で筆者の電話での質問に対して、答えが分からないのか面倒くさい案件と感じたのか、Google日本法人が他の出版社を「ここが窓口だ」と言い張って、全く関係のない出版社を紹介するような場面がある。さらには、埒があかないと感じた筆者がメールにて問い合わせしても、回答はついぞ返ってこない。一企業の対応として、これはどうなのか。この一連の対応といい、出版社ではなく飽くまで個人を相手に意思決定を求める姿勢など、ところどころにGoogleの「大きいものは相手をするが、小さいものは無視」という企業としての強い傲慢さが伺える。Googleの打ち出す数々の新しい事業の裏で、いかに「力なきマイノリティ」が辛酸をなめさせられているのか。一事が万事ではないかもしれないが、この手馴れた手法にそんな舞台裏を垣間見たような気がした。

③決着?
フランスやドイツの国家ぐるみの抗議もあり、多くの国の書籍がGoogleブックスによる不当なスキャンを免れるよう、Googleが和解案を出している。しかしながらアメリカ、カナダ、オーストラリアの文献は依然としてスキャンの対象を外れておらず、和解案は依然として承認されていない。本書で語られる時系列のその後を語る文献が見つからずなんとも歯がゆいことこの上ないのだが、現時点でGoogleブックスを使ってかなりの日本の文献が閲覧できるのはどういった理由からなのだろうか?和解案が通っていないからと、日本の書籍もスキャン対象にした旧和解案のスタイルを取って平然としている?あまり適当なことも言えないので控えるが、なんにしろ決着はまだ先の話のようだ。

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