2011年1月3日月曜日

【冬休み】ホンヨミ!①なぜ科学を語ってすれ違うのか【黄】

なぜ科学を語ってすれ違うのか

ジェームズ・ロバート・ブラウン著



①ソーカル事件
今後の世界では、何が科学を支配するようになるのか。
この議論は長い間、収束を見ない議題であった。その中で1996年、物理学者であったソーカルによって発表された一つの論文がこのサイエンス・ウォーズに油を注ぐこととなる。何十年も前からこの争いの無益さは指摘されてきた。リチャード・ファインマンは「科学者にとって科学哲学の無益さときたら、鳥たちにとっての鳥類学と大差ない」と数十年前に指摘。それから今に至るまでの間、理系・文型間の科学観は隔絶する一方である現状を踏まえ、本書はソーカルが提起した問題をベースに、世界で展開されてきたサイエンス・ウォーズの全貌を客観的に分析する試みがなされたものだ。

②科学とは何か
本書には主に2つの指摘が込められている。まず一つ目は科学哲学・科学論の研究が「科学とは何か」について、科学者とはまた異なった局面から重要な知見をもたらしうるという指摘だ。
「科学とはなんぞや」という問題の解は、科学者たちだけでは答えの出せない特質があるとのこと。しかし今日の科学者にこの事実を認識している人がどれだけいるのか。この認識の欠如は時代が進むごとに深刻化しており、科学の営みをメタレベルで見直す必要性がそこにはある。

③合理的な営み
科学は合理的な営みであり、科学者は様々な価値を持ちつつも合理的なアクターとして機能できる、と言うのがもう一つの指摘だ。科学は先入観や自己欺瞞、欲望、願望にまみれた一個人が客観的・合理的に機能する難しさと戦い、その合理性を論証しようとする働きだ。その中でうみだされた価値は科学の営みにおいて重要な役割を担っていくだろうし、その先の「科学の民主化」と「科学の専門性の担保」の両立へとつながっていくだろうと筆者は主張してやまない。

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