2011年1月7日金曜日

ホンヨミ0107②プロフェッショナル達の脳活用法【斎藤】

『プロフェッショナル達の脳活用法』(著)茂木健一郎

本書で関心を持ったのは、制約とのつきあい方について描かれた章だった。
では、制約とはなにか。本書では、現代にみられる多重文脈性によって人がそれぞれの文脈において、それぞれの役を果たさなければならなくなり、結果的にこの役ではこのようにあるべきだと自らに制約をかけてしまっている状況のことを表す。

はたして、昔の時代では本当に制約が存在しなかったのかという議論が十分になされていない感は否めないが、現代におけるIT技術によって一人の人間が関わることができる領域が広がり、かえって多分化を引き起こし人間の脳にストレスを与えていると分析されている。そもそも、脳科学的には人間の脳は一つの事に集中して全エネルギーを傾注することを得意とするらしい。

また、生物の脳には一定の状態を保とうとするホメオスタシス(恒常性)の働きがあり、それにより体温、脈拍等の変化を元に戻そうとするらしい。つまり、生物の脳は本質的に固定概念にとらわれがちなのだが、人間は例外的にそれからダイナミックにはみ出すこともできるため、その能力に長けた人物達が開拓者と呼ばれるようになるのだろうと述べてある。そして、固定概念にとらわれないことが結果的に先に述べた文脈にとらわれないことにもつながる。

具体的な考え方をあげると
-専門性を高めることは仕事を分割することでなく、むしろ全体を見失わずにバランスを とるために専門だからこれだけしかしないと思わない。
-ずっと同じところにいたらそれが当たり前と感じるので、絶えず新鮮な目で問題意識を持つ。
などがあるが、そのなかでも自分自身のなかで確固たる軸を持つ事の重要性を示している。人間の脳は確かなことと不確かなことの間でバランスをとるので、ある軸がなければ不確かな事にチャレンジできないのだ。

以上のような事柄が本章には述べられている。
私自身は個人的に活用法など〜法とつく本を読むのが大嫌いなのだが、受験時代に参考にしようと思い本書を買った。そして、今回帰省したときに再度読んでみたのだが、あとがきの部分で茂木さんが述べている頭がよくなりたいという願望は太古の昔から人類が抱きつづけ、その方法論が貧欲に追い求められてきたという部分に共感できた。

太古の時代でも、その時代のさまざま制約のなかで、文明を発展させてきたのだから人間は制約のなかであってもさらに何かを進化させる、あるいは自身が進化する能力を持っているのだと思った。

0 件のコメント:

コメントを投稿