2011年1月7日金曜日

ホンヨミ0107①プロ弁護士の思考術【斎藤】

『プロ弁護士の思考術』(著)矢野正秋

本書では思考することの重要性を説いている。その際のポイントとして
一、抽象的ではなく具体的に考える
二、計画、思考の手順をたてる
三、行動は思考を弱める
以上の点をあげている。

まず抽象的に思考することの弊害は個々の事例を一般化してしまい、機械的にものごとを判断してしまうことである。当然のことながら社会の出来事はどれもが個別の具体的な事例であり、それぞれが異なる事実である。この事実をどこまで詳細に把握できるかが思考する上で重要となる。にもかかわらず、詳細を正確に把握しないまま、情報の不足を棚上げして事実を一般化してしまえば、後に決定的な誤解を生み出してしまう。ここではできるだけ、個別具体的に事実を認識し、情報がもしも不足しているならば不足しているという事実を認識した上で思考することがポイントとなる。

また、本書で引用されている数学者であり哲学者でもあるゴットフリート・ライプニッツのが定義した連続律の考え方も重要だ。自然は飛躍することがない、つまり、あらゆる存在は独立した単独の個々ではなく連続しているのだと筆者は理解している。この理解の助けとしては死について考えてみると良い。人間はいきなり生から死の状態になるのではなく、ある過程を経て生から死に至るのだ。これは、全ての事象が対極に位置する二項の対立によっては表しきれない事を示す。

これは先に述べた具体的に思考することにも関連する。状況が完全に把握できたか、できていないかの極論によって思考するのではなく、なるべく完全な状況に近づける姿勢を維持する必要があるのだ。人間は足りない情報を補完して一般化してしまう傾向があるのでその点について注意しなければならない。

また、感情に流されない思考をするために、物事を順序だてることも求められる。突発的な感情に突き動かされてしまえば具体的な事実について思考することができなくなるからだ。感情による思考を排除することの意義は無理な精神論に至る事を防げる点にある。やればできるといった精神論にもとづく思考は、最初は勢いがあっても最終的には脆いものだ。

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