2010年12月12日日曜日

【ホンヨミ1210】経済統計でみる世界経済2000年史【田島】

アンガス・マディソン『経済統計で見る世界経済2000年史』

経済力を図る指標の一つとしてGDPという概念がある。実際に統計としてGDPが算出されるようになったのは1950年代にOECDが初めて以降のことであり、それより以前はGDPのデータは残ってない。(もちろん50年代以後でも東側陣営などのように必要な統計を提出しなかった国もあるし、統計手法も現在よりは劣っていたので、全て確からしい数字が出ているとは言えないが。)数々の学者が50年以前のGDPの推定を行っているが、その中で偉大な功績を遺したと言われているのがアンガス・マディソンである。なんと彼はあらゆる資料を一生をかけて読み漁り、西暦1年から現在までのGDPを推測して算出してしまったのだ。もちろん彼の出した数字は無茶な推測の域を出ないかもしれないが、2000年の人類の発展の様子をイメージするものとして非常に興味深い本である。

特徴的であったポイントをいくつか挙げる。
一つ目は、19世紀から現代にかけての人類の発展は歴史的に見ても特別であったということだ。二つ目は昨今におけるアジアの台頭の目覚ましさである。終戦直後のアジア諸国のGDPは限りなく低く(アフリカ人の中には「昔は日本よりうちの国の方が経済がよかったのに」とぼやく者もいるという)、その後の日本、さらに韓国台湾などのアジアNIESの発展は世界を驚かせた。同じNIESのなかでも、南ヨーロッパや南米諸国がその発展曲線が途中で落ち込んだのに比べ、なぜアジアが発展を遂げたのか、書籍を読んで調べたいと思った。

長期的視野で見ると、経済的支配力を持つ地域、国は時代ごとに次々と移り変わっている。現代においてグローバル化・技術移転等が進みそのスピードはますます加速しているといってよい。目先だけでなく、長期的な視野をもって経済を見る視野を与えてくれる(若干長期的すぎるかもしれないが・・・)学術書の中でも特徴的な本である。

0 件のコメント:

コメントを投稿