2010年11月28日日曜日

【ホンヨミ1126】ネット帝国主義と日本の敗北【田島】

ネット帝国主義と日本の敗北

インターネットの発展とともに爆発的に増えたもの、それは無料のサービスである。何かを調べるとき、人は辞書や事典を購入する必要はなくなった。ウェブに関するサービスなら、パッケージソフトを買わなくても世界のどこかにフリーソフトが落ちているだろう。無料モデルを完全に確立させた企業はまだ数少ないが、ウェブサービス事業者は無料で価値を提供し、ひとまずどんどん人を集めようとする。結果起こることは消費者の購買感覚のデフレーションである。モバゲーが、アメーバピグが有料だったとしたら消費者は見向きもしないだろう。コンテンツ制作者はアイテム課金やプレミアム課金など、無料の敷居を保ったまま別の方法で稼ぐことを余儀なくされる。このビジネスのパラダイムシフトにおいて動揺するのが、コンテンツホルダーである。違法アップロードが当たり前の現在、DVDなどのパッケージ売上による収入以外にどのようにお金を稼ぐ必要があるのか?「フリー」は無料モデルを世界に紹介したが、それに伴い業界に漂う危機感を書籍にしたものは本書以外にはまだ少ない。米企業グーグルの独占を始め、新しい技術の楽しさに惹かれるばかりの日本人に「本当にこのままで大丈夫なの?」と警鐘をならす新書である。コンテンツの多いプラットフォームに人が集まり、さらに人が集まるスパイラルなど、シェア格差が開きやすいウェブ産業であるが、いったいどこの国のどの法律がその均衡をとっていくか考えていく必要があるだろう。

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