2010年11月10日水曜日

【ホンヨミ!1105①】モジュール化の終焉 統合への回帰/田中辰雄【斎藤】

【モジュール化の定義】
まず、本書におけるモジュール化の定義を述べる。簡単に言うと”ユニット間の固定されたインターフェースが公開されている事”である。固定されたインターフェースに従えば誰でもユニットの生産が可能であるということだ。インターフェースとは自動車でいうシャーシにあたり、ユニットはシャーシに組わせるその他の部品となる。つまり、インターフェースとはユニットAとユニットBを連結される媒体となるものと考えてよいと思う。公開されている規格に従えば誰にでもユニットの生産が可能であり、それによって引き起こされる競争による価格低下などがメリットである。それ以上に、突破型革新技術の恩恵を受けられるというのもメリットだ。これまでに無かった新しい製品が生まれたときに、それを組み込む事ができるということである。パソコンとワープロの違いを考えると分かりやすい。パソコンならば、新しいサービス等を後から組み込む事ができる。それはユーザーが自分で設定をしなければならないなどの難点があるが、ワープロのようにはじめから完成された製品と異なり新しい機能を組み込む事ができるという可能性を持つ。こういったモジュール化が情報通信産業では主流であった。

本書ではこのようなモジュール化が終焉するとしているのだが、それは何故だろうか。
まず、留意点として本書ではモジュール化がエンドユーザーの領域において終焉すると述べられているにすぎないことを述べる。つまり、パソコンメーカーのデルは規格を公開して世界中から部品を調達する一方で、パナソニックは統合型の特徴に見られるように専用設計部品として発注しているといった違いについては別の議論、考察が必要としている。ここでのモジュール化の終焉とはAppleのIpodとitunesのような統合型のサービスについて考えるとよいと思う。

【終焉の根拠】
モジュール化終焉の根拠とされるのは、情報通信産業において
(1)突破的革新の頻度が低下した
(2)ユーザーの要望は製品の安定性、使い易さとなった
(3)インターネットにおいて統合型サービスが増加している
以上の三点である。たしかに、音楽のダーウンロードの関して、以前ならば配信事業者、再生ファイル形式、再生ソフト、再生プレイヤー組み合わせを自分で行わなければならなかった。ある程度の知識が無い人間にとっては敷居の高い仕組みである。これに比べて携帯配信やitunesでは以前より機能は限定されるものの、ユーザーは統合されたシステムの中で好きな曲をダウンロードし、そのままプレイヤーで再生するだけである。楽曲の善し悪しもあるだろうが、こういった簡単なシステムによって携帯による音楽配信での100万ダウンロードが簡単に実現しているのだろう。余談になってしまうが、既に成功をおさめているitunesではSNSの機能も組み合わされた。これに関してはネットワーク外部性も関係するだろうが、より簡単にサービスを楽しめて、それらを簡単に友人と共有することができるためには一連のサービスを統合化しなければ実現はできない。

本筋には関係ないが、ネットワーク外部性を定義するならば同じサービス、財の利用者が増えるほどに、その利用者の利便性が高まることである。例えば、電話を使用する人が世の中に一人しかいなければ電話を使う意味が無い。二人以上いて初めて電話による通話が可能になり、電話というサービスの価値が生まれる。それ以降に電話の使用者が順当に増えていけば多くの人と通話できるようになり、電話というサービスの価値もそれに比例して高まる。windowsユーザーが多ければ互換性などの問題から他のユーザーもwindowsを使うといった例も挙げられる。

【モジュール化終焉とガラパゴス日本】
モジュール化の終焉のよって日本企業にも躍進の可能性があるといえる。これまで日本は携帯電話を筆頭に世界基準とは異なる独自の規格を定めてきたことからガラパガスと揶揄されてきた。しかし、消費者が統合化したサービスが求めるようになれば、NCで扱ったSHARPのGARAPAGOSなどにも成功する可能性を見いだせるのではないかと思う。それは、amazonのkindleがアメリカで成功している事実に裏付けられる。統合化したサービスでは、突破型技術革新が起こりにくいとされるが、確かにGARAPAGOSとIpadの違いや改善点は一般消費者に分かりにくい。全く異なる統合されたサービスをまるまる開発・普及することができなければ、既存サービスをまねた統合化されたシステムの安定性、簡易性勝負となってくるのだろうが、消費者の立場からすると異なるデバイス間でもコンテンツ再生は可能であるようにしてくれればありがたいと思う。itunesのコンテンツをGARAPAGOSでも楽しむ事ができれば素晴らしいシステムだろう。そういったことができたのがモジュール化主流時代にあったMP3のメリットだったのだろうと思った。それを捨ててでも簡単なシステムを提供してもらう事は私個人に限って言えば有り余るほどの便利さを感じる。

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