2010年10月21日木曜日

ホンヨミ② ハチは何故大量死したのか【黄】

①ハチの大量死
臀部に強力な針を持ち、その危険性からも人間界では忌み嫌われている蜂だが、自然界の生態系を維持するにおいて、もちろん彼らも重要な役割を担っている。
2007年、アメリカで実に大量の数の蜂が姿を消した。ここで言う蜂とは、野生は含まず養蜂家が飼っている蜜蜂のみを指す。アメリカだけでも実に300億匹の蜂が死んだ。また、数字から言うと2007年春までに、北半球だけでも1/4の蜂が消えたという。
この事態は単なる養蜂家の被害だけですむ話ではない。
蜂が運ぶ花粉、つまりは昆虫受粉によって実をつける野菜や果実はたくさん存在する訳で我々が想像する以上に大きなダメージが引き起こされるのである。
では何故大量の蜂が死んでしまったのだろうか。

②犯人
犯人は人間という生き物によって引き起こされた環境変化である、と筆者は断言する。
つまり犯人は我々だったのだ。もちろん本書では、どのような環境変化が大量の蜂を死に至らしめたのかを実に丁寧に記している。その切り口は、農薬使用のプロセスやメカニズムの現状など非常に様々な視点から考察されている。本書は単なるサイエンスに領域を留まっていない。そこには筆者の生態系の動的平衡の考察まで目を向けさせようとする意図が十二分に感じ取れるのである。

③最大の原因
様々な環境変化が引き起こされた。しかしその中でも蜂にとって非常に大きかったのは「工業化された農業」の台頭であった。それは蜂達に多大なストレスを与え免疫抵抗性を弱め、ダニやウィルスなどの天敵に対する自己防御力を著しく低下させた。さらにそこに農薬が登場。正確かつ完全な生態系の仕組みの中で構築されていた蜂の社会生活は、いわばアルツハイマー症に陥れたと筆者は言う。弱るところまで弱り、病み、疲れきった蜂達はバタバタと倒れた。そして巣に戻る事はなかった。これを読みながら思った。これはまさに人間社会の縮図ではないか。我々人間の愚かさははいったいどこまでいけば終わりにたどり着くのか。大量の蜂がこの地球から姿を消した。我々もまた同じ運命を辿る事にならぬよう何ができるだろうか。いや、何をすべきなのか・・・。

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