『2010年日本APEC~アジア太平洋協力:21世紀の新課題~』
山澤逸平(著)
①ボゴール目標
APECが発足して「アジア太平洋に自由貿易を実現する」共同声明がなされ、それをさらに野心的に発表したのがインドネシアのボゴールで開かれた首脳会議で、1990年に「先進国メンバーは2010年までに、他のメンバーは2020年までに貿易自由化を実現する」というボゴール宣言が採択された。
今年、2010年に横浜で開催されるAPEC。ボゴール宣言が採択された時の目標年になったが実現できていない状態である。議長国である日本の外交手腕が問われる状況下、日本は中国に抜かれて世界第三位の経済大国となった。とはいえ世界3位はまだまだ経済的影響力の高い地位にあり憂う事態ではない。円高が進む中各国経済がどういった動きを見せ、最終的にどう採択されるのかに注目したい。
②FTAAPとTPP
ボゴール目標後の取り組みとなる高度の自由化・円滑化、つまりはFTAAP(アジア太平洋自由貿易地域)やTPP(環太平洋戦略的経済パートナーシップ)の推進が注目される。FTAAPはAPEC全体でFTAを形成しようというものでAPEC大の単一市場を形成して最大の経済的利益を達成できるというものだ。TPPはブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポールの4エコノミーで形成したFTAで、APECの自由化目標を共有して、より広域の自由化につなげることを掲げている。アジアから阻害されるのを恐れたアメリカはTPPに参加、より高水準の自由化の形をつくってからTPP→FTAAPの路線をとろうとしている。韓国はすでに参加をしていて、追って日本が参加意志を表明した。中国の参加がネックとなっていて、アメリカの戦略ではTPPからFTAAPに移行させる際に取り込もうとしているようだ。まずは枠組みを構築してから地域を広げていく。アメリカの思惑通りに事が運ぶが否か。
③東アジア共同体への動き
個人的に今後研究を深めたいと思っているトピックがこの「東アジア共同体」である。アジアを代表するといっても過言ではない日中韓の連携は必須で、強い連携がとれたら経済的にも最強の同盟が築けると思うのだが、そううまくはいかないのが現実である。東アジア経済共同体はおそらく成功できるだろう。しかし、東アジア政治安全保障共同体は現時点では困難だ。政治体制の相違はもちろんのこと、国境紛争などまだまだ解決すべき課題が山積みである。政経分離でできる統合には限界がある。APECを通して信頼関係を築き、問題を解決、ないしは未然に防いでいく努力が必要となる。いかにして今後信頼し合うことができる共同体を築くことができるのだろうか。実に興味深いと思った。
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