2010年10月16日土曜日

新聞はどこへ行く?

①問われる新聞社の在り方

議論2で「ジャーナリズムがなくなってもいいのか」という議題が提示されたが、これについてNCの間に色々考えていたことを少し。

毎日新聞は変態で産経は超保守の自公系広報誌、朝日は売国的で読売は洗脳メディアで…ネット上でのマスコミ評といえば実に惨憺たるものだ。最近では尖閣沖漁船衝突事件での中国の高慢な対応に発起して渋谷で起こった3000人級のデモを完全にスルーする(中国で起こったデモは50人程度でも報道する)など、時として情報隠匿としか思われないことまでするマスコミの姿勢は「マスゴミ」と言われて久しい。

このように土壌としては十分に適した環境でありながら、「草の根ジャーナリズム」という概念はどうも日本には根付き辛いようだ。韓国で大ヒットを飛ばし、満を持して列島に上陸した「オーマイニュース」は失敗し、「市民の市民による市民のためのメディア」をキャッチフレーズに立ち上がったネット新聞「JanJan」もあまり本領発揮できず休刊に追い込まれた。「JanJan」についてもう少し言うと、「麻生元首相の漢字の読み違いが多いことを最初に記事にしたのはこのメディアである」ということをやたら白眉みたいに持ち上げるが、いかにも庶民目線の面白くもない揚げ足取りで「またやった」「またやった」と一国の首相の品位をいたずらに下げるようなあの一連の報道は自分としては見ていてあまり好ましいものではなかった。それに迎合して同じようなことを報道し始めた大手メディアにも問題はモチロンあるが。

市民が報道を担うというところには「物事を必ずしも鳥瞰的に見られず、自分の価値観で瑣末な出来事を『ニュース』にしてしまう」という怖さがある(最終的な価値の有無は読者が決めることではあるが…)。これは象徴的な出来事だったと思う。

話を戻すが、このような市民初のニュースが流行らなかったのは、日本人が「何だかんだ言ってもやはりニュースソースが通信社だったり新聞社であるニュースこそがニュース」というのに慣れきって別段の不自由もしてこなかった結果であり、やはり権威ある報道機関に対する根っこの部分での信頼度は、近年ますますマスコミ嫌いの傾向著しい日本においても高いように思われる。

各報道機関が積み重ねてきた取材や報道のノウハウは世界的に見ても決して遜色のないものであり、ちょくちょくやるヘマがその「表面的な」信頼度を下げてしまってはいるが、やっぱりジャーナリズムは誰もが(少なくとも日本人は)必要としているのだと、先行き暗いこの業界をいまだに就職志望から外しきれない自分は一筋の光明を見出すのであった。


②新聞社はひとつも潰れないのか?

李先生が10年後(20年後?)までに新聞社がいくつか経営破綻するか否か手を上げさせる場面があったが、そこで思ったより「破綻しない」のほうに手が挙がったのが個人的にはかなり意外だった。

自分としては、もちろんジャーナリズム自体はこの先も残っていくし、その中で有力な新聞社もまた残っていくと思う。ただそれが「全ての新聞社(或いは全ての大手新聞社)が健全な経営を続けていけるか」という話になると全く別問題だ。10年後というのは飽くまで「中長期的に」という指標であって、必ず 10年後にそうなるかどうかなんて無論分からないが、少なくとも中長期的に見て大手の一部が破綻するのは無理からぬことだ。

長くなるので詳述は避けるが、なにせ構造的に無理がある。その性質的に国内市場しか相手に出来ないこと、その国内市場は少子化によりシュリンクし続けていくだろうこと。購読者はこの先減りこそすれ増えはしない(他社が潰れて読者が流れてでもこない限り)から、要するに新聞社的にはどうあがいても「ジリ貧」なわけである。新聞社の努力云々とは無関係な部分で既に根本的な無理が生じている。

加えて、これは肌感覚の問題提起として、自分の同世代がたとえば50代くらいになったときに新聞をお金を出して購読して毎朝読んでいるかというと、ちょっと残念ながら想像できない。それくらいに家庭に新聞があることを「当たり前」と感じず「不可欠」とも感じずに、なおかつそれでやれてきた世代が僕達なのだと思う。新聞があることが当たり前の世代、なくてもどうにかなると感じている世代、その隔たりは実はものすごく大きいのではないかと最近思う。当たり前世代が消えていって(書き方が不謹慎だが)、どうにかなる世代が新聞を最も読むくらいの年齢になったとき、果たして新聞は今のまま続いているだろうか?

実際朝日の2期連続赤字転落なんていうのは結構示唆的で、数字的なことを言えば朝日の販売部数はちょっと800万部を割り込んだ程度なので結構余裕があるのだが(相変わらず読売は1000万部堅守でもっと余裕がある)、毎日は300万部強、産経に至っては150万部程度。それで朝日も赤字と言うのだから、競合他社の様相は推して知るべし、といったところか。毎日はついにコスト削減のためと共同通信加盟を発表し、「全国紙」としての御旗さえ降ろした。不可避の構造問題は日々刻々と新聞業界を蝕んでいる。

身も蓋もないことを言うと、「それは新聞社が体質を変えていくことによって解決されうる問題なのか」ということさえ、混迷する現状においては分からない。

1 件のコメント:

  1. 実はわたしもすごく新聞に興味のあるひとりです。
    岡本くんと語り合いたい!ってすっごく思ったー!
    ぜひぜひ語り合おう♪

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