2010年10月22日金曜日

【ホンヨミ!1022①】「オバマ」の作り方【斎藤】

タイトルからも伺われるように、米国大統領オバマは誰かによって作られたということなのだが、その誰かというのがまさに民衆であるというのが本書のスタンスである。大統領選挙ともなれば莫大な資金が必要になり、これまでは大統領当選者の主な支援者は各界の有力者であり資産家及び営利団体などであった。しかし、前回の大統領選挙ではこれまでの常識が覆されて小口の支援をする多くの一般人のてによって彼の当選が実現したと言える。そのキーとなったのがショーシャルメディアであるというのが本書の大きな筋である。オバマ陣営が仕掛けた戦略のうち興味を持った点について触れてみたい。

ソーシャルメディアの利点として、オンライン上で支援者を繋がらせられるということがあげられる。しかし、なかなか困難な点はそれをどうやってオフラインの関係に持ち込むかという事だ。そこで実際に用いられた手法を紹介する。

まず、イベントと称して選挙序盤戦にオバマ陣営は支持者達に、ブログ、SNS、メールを通じて予備戦に向けた決起集会であるホームパーティーを主催するか、それに参加するように呼びかけた。支持者がネット上で自宅の一番近くにあるパーティー会場を簡単に見つけられるようにし、これまで互いを知らなかった支持者同士が顔を合わせられるようにしたのだ。それまで、ネットを中心に戦略をたててきたオバマ陣営にとってオフラインでの基盤を作ることは重要であり、ネットを活用して実世界でも支持者をつなげる、つまり、オンラインとオフラインを結びつけて活用することを意図としていた。

そして、オバマ陣営が支持者に求めた活動の主だったものは、誰にでもできる簡単なものばかりであった。5回だけでいいので勧誘の電話をかけることでは象徴的な例だが、決して何十もの回数を求めるのではなく、5回しか求めない事で支持者にやってみようと思わせた。これによって、過度な負担感を与えずに、自分は役に立ったという満足感を与えることに成功した。それは、支持者達に自分が選挙の為に頑張らなければならないというある種の使命感を抱かせたのだ。ここに当事者意識が生まれた。

この二つの例は、本書で述べられている内のごくわずかだが、そこから感じたのはオンラインからオフラインに移行させる為にはイベントをはじめとする具体的な催しであるとともに、感動という抽象的なものを共有させられるかどうかということも非常に重要な要素だということだった。

たとえば、ごく普通の和解女性が何故オバマの支援を行おうと思ったかということをサイトに掲載し、誰もがそれを読め、コメントを加えることもできるようにした。それはどんなに偉い人の言葉以上に身近な存在からのメッセージだからこそ心に伝わってくることがある。

ネット上で得た感動から生まれるエネルギーは必ずしもネット上に還元のではなく、人間がそれを押さえきれなくなったら次はリアルな世界に向けて吐き出そうとするのだなと感じた。それを巧みにコントロールしたオバマ陣営からは学ぶことがあった。





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