2010年7月10日土曜日

【ホンヨミ!0709②】次に来るメディアは何か【長澤】

『次に来るメディアは何か』 河内 孝(ちくま新書)

 次に来るメディアは何か。今までに存在したメディアを考えてみると、新聞・ラジオ・テレビ・インターネット等が挙げられる。次に来るメディアを考えるにあたって、先にこれから衰退してしまうのではないかと思われるメディアを考えてみた。私の頭に真っ先に浮かんできたのは新聞だった。ラジオは既に衰退してしまったように思えたし、テレビは地上デジタル化することも考慮して、まだ存続していくように思えたからだ。また、インターネットについても、まだ世間に普及したばかりであり、まだまだ発展途中だと思った。
 新聞の衰退を考える上で、まず本著で挙げられているのが、アメリカの新聞社の例である。新聞の廃刊、若しくは電子版への移行が進行しているという。そして、新聞の衰退は新聞業界に大きな影響を与えるだけでなく、ジャーナリストや印刷業者・輸送業者のような多くの人々が職を失ってしまうという状況まで引き起こし、アメリカの雇用の問題にまで発展してしまった。新聞の廃刊が雇用の問題まで発展するとは思ってもみなかった。そして、新聞を廃刊に追い込んでいるのが広告収入の減少であるという。不況の影響も受けているのだが、何より新聞の広告収入が減少する原因となっているのが、インターネットサイトへの広告掲載の増加である。確かにどこのホームページを見ても、ページの上段や左右に広告が掲載されている。
 また、本著にはアメリカのジャーナリズムについて数人の関係者のコメントが掲載されているが、私はアリアナ・ハフィントンの「私たちが今日、ここで議論すべきは、どうやって(既存の)新聞社を救うかではなくて、どうやって多様なジャーナリズムを助長し強化するのか、ということであるべきです。」という指摘がもっともだと思った。いくら既存の新聞社を救ったところで、大手新聞社が中小新聞社を傘下に入れている以上、その系列の社風は変わらない。それを救うということは、同じような思想の新聞ばかりが世に出回ってしまうということになるのではないか、と私は思う。
 最後に、現在衰退の一途をたどる新聞に比べ、本著で考えられている「“次に来る”メディア産業図」を考えてみる。その中でメディアと通信・ITの連携状況の図は、先に述べたように衰退の一途をたどっている新聞社が単独での存続は厳しいということも考慮し、それゆえ、どこかの会社が市場を独占するのではなく、テレビ会社や出版社・通信会社との連携によって皆で生き残ろうという形がとても興味深かった。また、ジャニーズ事務所・エイベックス・吉本興業連合などによるコンテンツ制作と番組販売のメディア・グループ「JAY」も斬新で、実現したら面白いのではないかと思った。
 近いうちにやって来るであろう「次に来るメディア」は目新しいものではなく、今日存在しているメディアの集合体なのだろうと思う。

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