2010年7月12日月曜日

ホンヨミ!】0709①思考の整理学【岡本】

『思考の整理学』 外山滋比古著

まず、1986年に書かれたという本書が未だにヒットを続けているという点が興味深い。

それもそのはず、当時まだ一般レベルでは全くと言っていいほど普及していなかったパソコンが今後、社会においてどういった立ち位置となっていくかということまで言及してあり、その優れた先見性は驚嘆に値する。

自分自身も重々承知していることだが、人間の記憶力なんて所詮限りがある。対して、記憶の引き出し方は若干不器用であるけれども、パソコンには基本的にその限界がない。人間が一日かかって記憶できない文書が、パソコンではハードディスクの端っこの端っこだけで記録できる。そのフィールドでパソコンと戦って何になるのか?勝てるのか?あるいは勝つことに意味があるのか?

仮に人間の本質が優れた記憶力にあるのならそれを磨いていくのが求められる在り方なのだろうが、「そうではないでしょう」と。0から自分で考えて、0を1にできるのが人間の本質であり、機械に対する圧倒的な優位性でしょう、と。にもかかわらず、機械に担われるべき役割を無謀にも担おうとする「グライダー人間」が増え、著者はそんな現状を憂いて「自分で考えるコツ」を提示する。「思考の整理学」とは「自分で考える」ためのヒント集である。

本書の根幹をなす「創造とは何か」という問題。既存の理論AとBとCをつなぎ合わせて適当に肉付けした理論Dは果たして「創造」と呼べるのか。字面だけ見たら到底そうは呼べない理論Dのようなものが、形式として取りあえずはレポートなり学術論文なりといった体をなすことで、さも創造であるかのように扱われてきた(特に人文系の分野で)。これについては、なるほどと思う部分も多く、自分を省みたときに大変耳の痛い話でもあった。この反省を踏まえ、自分もいつか理想の「カクテル論文」(著者の造語)が作れればいいと思う。

スクラップやカード・ノート、メタ・ノートなど、自分が今までやってこなかった思考の整理「法」についても触れられていて、全てはできないにしても一つ一つは確かに有効と思うので、取り入れていけたらと思った。実際に既にいくつか取り入れたものもある。

「考える」という普遍的な行為に道しるべを示してくれる良書。

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