2010年6月18日金曜日

【ホンヨミ!】日本辺境論【矢野】

冒頭にもあるとおり、この本は丸山昌男氏の日本に対する見解を、著者の内田さんが深めて著したものであるそうなのだが、内田さんらしい語り口で分かりやすく述べられており、楽しく読めた。私は日本人の「いかにも辺境らしい」部分が好きではなかった。消極的、付和雷同しがち・・・そのような面ばかり目についていたが、この本ではむしろその「辺境」は良いものまた、良く変えていきうるものとして扱われていたので新鮮だった。辺境人の素質を持っていると挙げた後に「こうなったらとことん辺境で行こうではないかというご提案をしたいのです」という記述が印象的。また、私自身も「辺境人としての日本人」を幾分か肯定的に捉える事ができた。日本は○○という名乗りから生まれた国ではなく知的努力の結果論として生まれた国なのだ読んでなるほど、と思った。確かにその過程は素晴らしいが大元の定義付けがないから問題にあたった時に事が難しくなるのではないかと思った。大義名分でも「国家のあり方」があってその解釈がある程度国民に膾炙していれば、そこに拘束力のようなものが生まれるであろうが、それがない。国民の数が比較的少ない国だからこそなしえることだと思う。仮説ベースではあるが、アメリカの選挙には、どれが「アメリカ」という国(アメリカの歴史的その他諸々の概念を含んだ意味での「アメリカ」)をつないでいくのにふさわしいのか、という基準があるのかもしれない。逆に日本でははっきりとした「日本」という概念が共同体の中にないから「国民の良心」のような抽象的な基準で選んでしまっているところがあると思う。また、この本の中で日本語についても多くが語られており、「日本語」というものの特徴等を今まで学んでこなかった私にとっては非常に興味深かった。
前にも書いたが、アメリカ視点で書かれた海部美和さんの「パラダイス鎖国」と好対照を成しており、面白かった。

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