2010年6月18日金曜日

【ホンヨミ!0618①】デザイン思考が世界を変える【栫井】

人とモノの関係性とは?それを問い直すのがデザイン思考だと思う。
従来のイノベーションの創出方法が技術開発に偏っているとしたら、IDEOが編み出したデザイン思考によるイノベーションは、進歩する技術を人のニーズと結びつけるものである。
デザイン思考では、隅々にまで人間の考え方や行動の仕方、日常の過ごし方が考慮されている。どうしてそれほど人間を重視するかというと、モノとそれを使う人間の行動プロセスは、当たり前ながら密接な関係にあるからである。
モノが行動を呼び、行動がモノを呼ぶ。この繰り返しで人間の生活は成り立っている。どんなモノがより人のより良い行動を生むかをデザイン思考では考える。モノよりも人の行動を中心に考える、正に「名詞より動詞」の思考なのだ。

私がデザイン思考を面白いと考える理由のひとつに、消費者のエンパワーメント性がある。
ウェブ・デジタル化により、今まで生産者でなかった人々が生産プロセスに関わる時代がやってきた。
音楽の例を取り上げてみたい。古くは楽譜しか出回ることがなく、人々は音楽を楽しむ際に自ら楽器を手に取り演奏する必要があった。しかし、レコードなどの録音機器やラジオのようなマスメディアの普及によって、音楽は自分で演奏せずとも勝手に演奏されて聴くことが出来るものに変わった。ここで音の生産者であった一般の人々が、単なる消費者に変わったのである。そして再び、YouTubeの登場・ボーカロイドを始めとする作曲ツールの発達によって、人々が音楽を作る時代がやってきた。
この波は、CGM(消費者生成メディア)やUGC(消費者生成コンテンツ)の隆盛に見て取ることが出来るが、同時にデザイン思考の中にもこの波は顕われている。

デザイン思考は人の行動に着目する。ということはつまり、人の行動が製品の中に組み込まれることである。
これまで消費者は、自分とはかけ離れた工場で生産されるモノを黙って享受することしか出来なかった。しかし、デザイン思考のように、消費者に聞き込み、行動を観察した結果の製品は、消費者にとって全く違う意味合いを持つのではないだろうか。
IDEOの消費者観察メソッドは、作り込まれブラッシュアップされ続けている。
このメソッドによって露にされた消費者行動の中に潜む緻密な感情を組み込んだ製品は、ただの製品改良とは違った意味を持つ。
人とモノの出会い方・付き合い方を変え、人の経験価値を一気に変える、発想の転換だ。

この思考は、もっと多くのものに活かされるはずだ。
これから行うバンナム企画、このようなパラダイムシフトを起こす思考法の可能性を探ることも、私の目標の一つである。

0 件のコメント:

コメントを投稿