2010年6月18日金曜日

【ホンヨミ!】②ブランドらしさのつくり方【斎藤】

『ブランドらしさのつくり方 五感ブランディングの実践』博報堂ブランドデザイン著

 現代では、パワーマーケティングといった、効率的に商品を生産し、物量の多さにものを言わせて低価格に押さえるビジネスモデルが顕著になりつつある。そこでは商品の個性が消費者に伝わりにくく、商品の同質化が進む。そうすると過当な価格競争がおこり、より廉価な者が選ばれていく。そういった、ビジネス戦略とは対極にある戦略と目指しているのが公告業界であり、博報堂が培ってきたノウハウがわかりやすく述べられている。

 では、パワーマーケティングの対極にあるものとは何か。その一つが商品の〜らしさを見極め、消費者に伝えていくという手法であると考えられる。本書では新宿駅の五感ブランディングという仮想の計画が行われている。実際に皆さんが新宿駅に関して思いを巡らせたとき、新宿駅らしさというと何を思い浮かべるだろうか。私自身は、ごみごみとして喧騒の絶えない場所である事を想起した。

 この点は多くの人に賛同をもらえると思うが、この場合では駅の東口にしか目を向けていない。西口方面に目を向けると状況は変わってくるのだ。東口を抜けて歌舞伎町に行くのと、西口を抜けて都庁方面に行くのでは異なったシチュエーションがある。ここから、言えるのは新宿は少なくとも二つの顔を持っており、それは一見矛盾するものだが上手く共存している。ここから見える新宿駅らしさとは何だろうか。その一つの答えは本書で提示されているが、あえてここに記載しないので皆さんにも考えてもらいたい。

 商売の基本は金銭のやり取りであり、ともすれば私たちの目はそこにばかり向いてしまいがちだ。売上高などの数値化できるものばかりではなく、これからは価値観、情緒、感覚などの抽象的なものを付加価値として与えていくブランディングも重要となるだろう。それは、圧倒的多数の商品の中から抜け出す事ができる商品の開発とも言える。

 本章を読んでブランディングに成功している企業はどこだろうかと考えたときに、ユニクロが最初に浮かんできた。ユニクロの戦略は典型的な成功例だと言える。ユニクロの商品は低価格にして、ユニクロらしさを失っていないからだ。例えば、昨年流行したヒートテックは、有名スポーツプランドのシャツに比べて格安であるにも関わらず、機能面では全く劣ってないどころかむしろ優れているのではないかと消費者に思わせることができた。デザインはシンプルかつ、あくまでもコーディネートに取り入れられる脇役としての位置づけを保つことで市民権を得た。

 私が思うに脇役であることがユニクロらしさではないだろうか。この点を考慮しても、ユニクロがジャケットなどではなくあくまでもシャツにおいてヒートテックを開発したのは素晴らしい自己分析力だと思った。多くの商品に埋もれる事なく、らしさを追求することは商品の価格帯に関係なく重要なのだと感じた。

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