2010年6月21日月曜日

【0618ゼミの感想】テレビ!テレビ!テレビ!【岸本】


 テレビに関してのNCは新鮮でした。視聴率を軸に、1つ1つのスライド、プレゼンには知らない事実も多く、よくまとまっていて感心しました。
 
 その一方で、正直視聴率に偏り過ぎたかな、というような印象もありました。現状の測定方法なども大事ですが、その測定方法が現状にそぐわない状況になっている。(地デジ完全移行によって完璧な視聴率捕捉も可能だったのではないか?と思ったりもしますが、技術的な実現可能性が分からないので割愛します。)その現状にそぐわない視聴率の測定方法からの変化をテレビ業界は何故拒むのか。そして今後広告費が下がることが分かっている中でどのようなビジネスモデルの変化が見られるか。類似例は海外あるいは他の市場に無いか。そういうことを突き詰めて考えるとより様々な考察が得られたのではないでしょうか。

 視聴率というのは視聴者のattentionを測るもので、最初は「マスメディア」という言葉に表されるように大衆=みんなが少数のメディアに集中していました。その後、様々なメディア、コンテンツあるいはVHSやHDDのような録画機器の登場によりattentionが分散するようになりました。そして視聴率が低下し、広告費も低下し始めました。テレビ業界的には、広告費が下がっていても、既存の視聴者と広告主を手放したくない、そのために低リスク思考になるために低予算で作れる似通った内容の番組が多くなったように感じます。
 リスクを取ることが出来るのは深夜番組くらいでそのため深夜で実験的な低予算の番組がクール毎に沢山作られ、その中でうまくいったものがゴールデンへ進出する。ゴールデン進出を遂げると一気に注目されるものの、深夜ほどグダグダまたは過激な内容を扱うことができず「ポップ」になってしまうことを余儀なくされるためにすぐに陳腐化してしまうことが多々見られます。(個人的には「イノベーターのジレンマ」がテレビ業界には2つあって、1つは業界のビジネスモデルに関するもの、もう1つはコンテンツ(=番組)に関するものであると考えています。)

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 そして槇さんのお話。インサイダーとしてのテレビ業界の苦しみが伝わってきて、変化を起こすことの大変さを実感しました。特に印象に残ったのは、コンテンツのバリューがいつまで持つかという話と、テレビ局の情報ソースは基本的に他メディアか人脈頼みであるという話。後者は現在誰でも情報が発信出来るようになったため、その気になれば素人が一次ソースにあたることもできるようになりました。
 例えば、ここ数日でのジャーナリストの江川紹子さんの番組降板問題で、大手のスポーツ紙やインターネットニュースなどは一次ソースであるTwitterを情報源とせざるを得なく、その報道のあり方は情報の受け手を失望させるものでした。素人が一次ソースに直接アクセス出来たり、編集してニュースサイトやレビューを行うことで大きな旧来のメディアと張り合って行くことも十分出来るようになった時代であるように感じます。

 またアナウンサーという職業の大変さがよくわかりました。(アナウンサーへの幻想が吹き飛びました笑)
 正直、決まった原稿を読むだけであれば初音ミクとかのような音声合成技術とインターフェースとしてのキャラクター(アニメ声とか2次元だけだと受け付けない人もいると思うので、3次元など選択の幅を設けるなどするのがいいのでは)が揃っていればい実現可能(というか実現例はいくつかあります。参考)だと思うのですが、緊急の際の対応や移行コストを考えると非現実的なのも事実です。この問題を埋められない限り、アナウンサーという職業は絶対必要とされると考えています。
 原稿を読む際には自分の意見を押し殺すということが求められながらもインターフェースとして、職務を遂行するアナウンサーはさながら職人のようだなと感じました。

 お忙しい中ゼミにお越し下さって、インサイダーなりの貴重なお話をいただき、また学生の話を真摯に聞いてくださり、ありがとうございました。

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 個人的には今後のテレビには2つの方針が控えていると思います。1つは既存の同期的なテレビを活かす方法です。同期してまで見てくれるということは、言い換えればある共同体(コミュニティ)にとって有益な情報であればテレビを見てくれると考えることが出来ます。大きく2つの具体策が考えられ、1つはソーシャルメディアを利用し、離ればなれの人々を繋ぐことで擬似的な共同体をつくるということです。この場合、広告はプル型広告になることが考えられます。(視聴者が多い程プル型になる傾向はスーパーボウルの例などを思い浮かべていただけると分かりやすいと思います。)
 もう1つは完全にローカルな地域密着型のテレビを目指すと言う方法です。これは鳥取県の中海テレビという成功例があります。大きな収益は見込めませんが、「地域のNHK」となることで地域の人々の生活を向上することは出来ます。

 2つめの方針として同期ではなく、非同期(オンデマンド)があります。これには少しゼミでも触れたHuluがあります。これはアメリカの4大ネットワークのうち3つによる会社で、アメリカからしか視聴できませんが、多くのコンテンツがあり、視聴者と広告主を集めることに成功しています。(広告費はYouTubeに追いついたとする専門家の意見もあります。)またこのサイトはユーザーの利便性を中心に設計されており、CMはテレビよりも少なくなっていて、またインターフェースがYouTubeなどの動画サイトよりもずっとすっきりしています。この場合、アカウントを作るインセンティブ(オススメ動画紹介など)を設計することで、アカウントを作ってもらい、結果的にターゲット広告(プッシュ型)を打つことが考えられます。Huluに類似したビジネスモデルでは日本のアニメと韓国のドラマを扱う「クランチロール」なども挙げられます。

 もちろんこの2つの方針はどちらか片方だけでなく、うまく組み合わせることが必要であると考えます。例えばHuluはテレビと時間差を置いて番組配信をしていますし、またニコニコ動画はオンデマンドであっても疑似同期とも呼べるような同期システムを用いることでコミュニティで盛り上がっているような感覚を視聴者に与えます。いずれにしても既存のテレビ業界からすれば早いうちにリスクを取らないと、規模は縮小するばかりなのではないかと考えています。

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