2010年6月3日木曜日

【ホンヨミ】0604①テレビ進化論【村山】

「通信と放送の融合」をテーマに、メディア産業やコンテンツ産業を広く概観し、それら産業の成り立ちや関係性を紹介した一冊。


本書では、メディア産業・コンテンツ産業・キャラクター産業をまとめて「メディア・コンテンツ産業」と総称しているが、その構造が非常に分かりやすい形で明示されている。メディア・コンテンツ産業は、大きく分けて二つの部門に別れている。生産部門(キャラクターやコンテンツ)と流通部門(メディアやインフラ)である。生産と流通の一連の流れは、例えば、一本の映画を作るために、芸能プロダクションから俳優(キャラクター)を借り、同時に監督やプロデューサーを集めて撮影を開始して、一本の映画(コンテンツ)を完成させる。その後、その映画は、映画館(インフラ)を通して、映画(配給会社)というメディアによって観客に伝えられる、という様な感じである。


また、コンテンツ産業の市場規模が十四兆円であることを提示した上で、そのお金がどのように生産されているのか、同時に、そのお金を得るためのコンテンツがどのように制作されているのかについて、コンテンツ産業をビジネスとクリエイションという、二つの構造に分割することで、分かりやすく紹介してくれている。


本書は、コンテンツ中心主義の立場の下、コンテンツに有益であるメディア産業の在り方を模索する、という見解が一貫している。つまり、コンテンツが主役で、メディアはそれを支える脇役ということである。しかし、このコンテンツとメディアの関係性の在り方は、簡単に答えが出せる問題ではないと思う。確かに、私たちが消費しているのは、コンテンツであり、メディアではない。例えば、「少年ジャンプ」を購入する時、私たちは、ジャンプの中にある一つ一つの作品(コンテンツ)を消費しているのであって、ジャンプ(集英社)というメディアを消費しているのではない。しかし、逆に、ジャンプというメディアが存在しなければ、私たちはジャンプの中にある作品を消費することは出来ない。つまり、コンテンツとメディアが、持ちつ持たれつの関係にあるために、どちらに優位性があるのかを判断するのが非常に難しいのである。

是非、本書を一度読んで、コンテンツとメディアが抱える問題に対する答えを、考えてみて欲しいと思う。

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