2010年6月1日火曜日

【ホンヨミ!0604②】新世紀メディア論【高橋】

新世紀メディア論~新聞・雑誌が死ぬ前に~ 小林弘人(著)

キャッチーなタイトルを見てわかる通り、読み進めて感じたことは、著者のものの見方・考え方がとにかく斬新だということ。「出版」という言葉を広義にとらえていて、「放送」や「通信」と「出版」を区別することは出版を狭義にしかとらえないこととなり、メディア企業の可能性を狭める危険な考え方だと著者はいう。
紙媒体で刷られるもののみを出版と呼ぶのではなく、あらゆるメディアを介した行為を広く「出版」ということによって出版社側は紙だけに固執せずとも新たなビジネスチャンスを作り出すことができるのである、と本著を読んでいて感じた。たしかに紙媒体にすがったまま今後も変化しなければ衰退の一途を辿るだろう。しかし、時代に流れを読んで上手く乗っていくことは新たなチャンスが生まれ、新しいビジネスモデルを形成することができる大きな転機だと捉えるべきだろう。時代の流れはそう変わらないし、出版社が長きに渡って築いてきた販売方法を一新させるにはちょうどよい変革の時代がきたのだと私は考える。そのためのヒントがたくさん本著の随所にちりばめられている。
海外の例も多く出していて、出版社の苦しい現状を把握しつつ、どう転換していくべきかを提言していて、変革に行き詰っていて固い頭を持つ出版社に対しては「ネット脳死状態」と辛辣に批判している。
著者の柔軟な発想力は読んでいてどれもはっとするものばかりであった。出版・書籍・雑誌・新聞のみならずブログ・広告・ジャーナリズムにまで幅広く言及していて、メディア新時代を切り拓いていくためのアイデアが多く挙げられている。専門用語の解説が細かく、誰にでも易しく読める内容となっている学術書であった。

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