2010年5月14日金曜日

0514②クラウドソーシング【吉田】

『クラウドソーシング』 バリー・リバート、ジョン・スぺクター他

本書は、製品やサービスなどの開発・販売促進などの業務を、賃金を目的とせずに参加してくれる不特定多数の有志を募って行う「クラウドソーシング」について様々な視点から分析している。
通常は研究開発や販売の促進といった業務を専門のスタッフが行うのに対し、クラウドソーシングではそれらの仕事を一般の群集(クラウド)が協力して行うことが特徴的である。この様な形態は、ベンチャー企業はもちろん、P&Gのような大企業でも行われており、大きな成果を上げている。

本書の中で特に印象的だったのは、
「クラウドソーシングの本質は、コミュニティが持つ斬新で力強いアイデアやひらめきを手に入れることだ。企業の役割は方向性を示して一歩下がることであり、コミュニティの活動に干渉することは目的にそぐわない。」
という記述である。
一般的には、商品やサービスは企業がリーダーシップをとって開発・展開していくべきものでありその様な形態でないと「船頭多くして船山に登る」事態になりかねない。しかし、同時に表題にWe are SMARTER Than MEとあるように、集合知は個人知に勝るのもまた事実である。ゆえに、本書に「ものごとをコントロールできている気がするなら、十分なスピードで進めてはいない。」と本書に書いてあるように企業は勇気を持って積極的外部のコミュニティの力を利用していく必要があると言えよう。「会社は「マドンナのように」、絶えず活動し、自己改革していかなければならない」のである。

また、有志によって行われるクラウドソーシングは、今までの消費社会と異なる新しい消費スタイルを提供しているとも言える。消費は製品やサービスを受動的に享受するのではなく、その開発や普及に積極的にかかわって行くことで、より快適な消費生活を送ることができるようになる。
最後に、クラウドソーシングを利用して読者からアイデアを募りつつ、数々の名パズルを生み出してきた日本のパズル雑誌『ニコリ』創刊者の鍛冶真紀氏の言葉を紹介したい。
「われわれは多くのパズルを生み出しているが、それはパズルをこよなく愛しているからであって、金が欲しいからではない」

このようなコミュニティが増えていくことは社会全体にとって大きなメリットとなるだろう。

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