2010年5月22日土曜日

【ホンヨミ!】電子書籍の衝撃【矢野】

今取り組んでいる「電子書籍」の論文に大いに参考になった本であった。また、発行が2010年ということもあって、非常に新しい情報まで書かれていてためになった。
まず、電子書籍は今後音楽界のiTuneのようになっていくということを再認識させられた。電子書籍を流通させるためには「プラットフォーム化」と「アンビエント化」が必要なのである。この二つが遂げられることによって、消費者はより便利且つ手軽に読みたい本を手に取ることができる。特に、プラットフォーム化することで得られるメリットは大きい。古い作品と新しい作品との間のハード的側面での敷居(高価、廃版による入手不可能又は古本のみの販売など)は取り払われることになるからである。また、電子書籍がこのような形を取ることで、セルフパブリッシングが可能になる。セルフパブリッシングとは、電子書籍上でアマの書き手が自由に自分の文書を本として発行できるようになることである。これがプラットフォームに並ぶことによってプロとアマの差が可視化されなくなる。ここである人は「日本の出版の質が下がる」と紛糾する。それに対して筆者は真っ向反対している。主張としては、「今の出版業界でさえ十分な出版の質を担保できていない」また「電子書籍化することでインフラが整備され消費者が使いやすくなるのだから、古い考えはやめた方がよい」というものであった。しかし、私はこの筆者議論に対して疑問を覚えた。まず、実際に編集者を通さない出版は非常に危険因子である。表現の自由を濫用する書き手が現れないとも限らない。そうすれば消費者には質が低いだけでなく、誤った情報が読まれることも考えられる。大の大人であればその分別もつくであろうが、メディアリテラシーのない子供にも触れさせることになるし、一定の規制なしにはセルフパブリッシング等の公開は行わない方がよいと思う。また「今の出版業界でさえ十分な出版の質を担保できていない」という筆者の主張は文章中にあまり十分な根拠がないのも気になった。日本で電子書籍を普及させるのにはまだまだ土台作りが必要ということであろう。今後、引き続き論文を書くにあたって考えていきたいことの一つになった。
しかし、本当に新しいしかも信憑性のあるデータを多く用いている点で非常に重宝する本だと思った。



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