2010年5月18日火曜日

【ホンヨミ!】ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代【矢野】

「左利きの人は頭がいい」
とよく取りざたされる。
真偽はよくわからないが、その人が右脳を使っているということでそのように言われるのだろう。この本の中で著者は右脳を使っていくことの重要性を説いていた。
「左脳は今後いくらでも機械にとって代わられる。」少し恐ろしい考え方だが、今自分の目の前にあるノートPCを見ていて確かに何とも反論できない。このような話は映画のテーマとしても非常によく取り上げられており、もはや避けられない道なのであろう。ただ、コンピューターができないことを隙間を縫って探して行く人間、というのも、なんだかなぁとありきたりな感想ではあるが感じざるを得なかった。
そんな時代だからこそ、これからは右脳の時代であると著者は説く。人間らしさ、感性等こそが次世代の人間に求められるものであろう、と。確かに近年、特に都心ではデザイン性溢れる建造物が増えている。私もこのようなものを鑑賞するのは大好きである。人間のニーズを満たすようなものがほぼ揃っている現代において、人や生活になじみやすいものが作られていくことは人間の新しい営みとしてよいと思う。高い技術と人間の情報処理能力をデザインで埋める、というのもよく言われている話だ。確かに今後は右脳の時代が来るかもしれない。
ただ、ここで思ったことは、また「右脳の鍛え」が「コエンザイム」や「マイナスイオン」のようなマジックワードになる気がしてならない。もう一部ではなりかけているのかもしれないが。「右脳」の意味がどんどん大きくなり、濫用されて無知な消費者をターゲットにした単細胞的ビジネスモデルができそうだな、とこの本にはあまり関係がないが考えてしまった(笑)。この本に話題を戻せば、「物語」として人は話を頭に入れる、という話はチップ・ハースのmade to stickという本にも同じく書かれていた。違いはmade to stickの方は物語の面白さを取り入れるべきだと言うのに対し、こちらの方はストーリー仕立てにすることに重点を置いていたくらいで内容にそこまで相違はなかった。情報だけならメディアを駆使していくらでも集められる現代においては、事実の羅列や議論ではなく物語として語ることがいかに大切かということがよくわかった。

著者のいう6つの感性というのは、確かに納得がいった。しかし、これを実践して伸びを期待できるのは本当に有能で既にある程度のスキルを持った人間に限られると思った。論理を積み立てて考えることができる人が、右脳的思考もできるハイブリッドな人間になるから価値があるのだ。左脳がうまく使えないから右脳で生きているという人は五万といると思う。逆説的ではあるが、まず左脳を使った論理的思考を身につけねばと思った。

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