2010年5月23日日曜日

[ホンヨミ!]0521②クラウド時代と<クール革命>[岡本]

『クラウド時代と<クール革命>』 角川歴彦

これからは名もない個人であっても、誰かが「カッコいい」と思うものがあっという間に広がり、世界を変革していく…著者はそれを「クール革命」と呼ぶ。

戦後内省の度合いを強めていった日本社会、それは自分の殻に閉じこもる傾向から文化的ガラパゴスの醸成に適し、結果として日本にしか生み出し得なかった「クール・ジャパン」が生まれた。

だから日本の内向き加減は決して間違いではなかった。そう著者は語る。

「クール・ジャパン」を生み出した(現状では専らアニメなどを指すのだろうが)という意味で日本の内省的傾向は評価されるべきものなのかもしれない。だがその内向きさは国際社会において良い面と悪い面を両方持っている。

これも本書で言われていることとして、日本はイノベーションが苦手。新しいものをまずは冷めた目で見るというスタンスを、日本は捨てていくべきかもしれない。IT業界というかつてなく進歩の速い業界で、日本企業は次々と淘汰されている。著者自らCEOを務める角川グループのyoutubeとの提携は、一つのあるべき姿だろう。その意味で、著者は現時点でこういったことを最も説得力を持って語れる一人だと思う。

今でこそ各地に散っているサーバーが一つの巨大サーバーに統合される「クラウド時代」がすぐそこに迫っているという。有力な場所はIT企業の巨人をいくつも擁するアメリカだが、それによってアメリカの一極支配を許すべきか。割と優等生的な本書で数少ない、著者の意見が全面的ににじみ出た最終章には、そんな問題提起がある。

IT業界、コンテンツ業界の覇権をいったいどこが握るのか。著者はアメリカによる一極支配阻止の糸口を、日本産巨大サーバーの政府主導での構築に求める。これがどこまで的を射た指摘なのかは正直よく分からないが、今後の動向から目が離せないことだけは確かだ。

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