2010年5月24日月曜日

【ホンヨミ!0521①】フリー【田島】

「FREE <無料>からお金を生み出す新戦略」クリス・アンダーソン」

投稿が大変遅くなって申し訳ありません。フリー、ぶ厚かったです・・・。しかしその分非常に歯ごたえのある内容を含んでいたと感じました。

インターネットの世界には無料が溢れている。私たちはポータルサイトで無料でニュースをチェックし、youtubeで無料で動画を楽しみ、無料のSNSで時間を潰す。普段使っているgmailのアカウントも、金ゼミのHP制作も、そして今書いているこのブログも、どれもが非常に高い、申し分ない機能を持ちながら、利用は無料である。よくよく考えてみよう、これってとてもすごいことなのではないか?なぜインターネット上にフリーが溢れているのか?フリー戦略とは何か?本書は、私が(世界中のユーザーが?)なんとなく感じていた「違和感」に真正面から取り組んだ本である。

この書評では、先日共同通信労働組合主催の講演会に出席してきたこともあり、ニュースマスメディアとフリーとの戦いについて考えてみたいと思う。

本書の思考システムである「潤沢と稀少」という考え方は、私にとってITとメディアのことを整理して考えるのに助けとなった。当然のことながら、潤沢のものは安く、稀少なものは高い。現在さまざまな新聞社、テレビ等のマスメディアがインターネットの脅威にさらされている。総務省発表の情報センサス白書を見ても明らかなように、情報発信のコストが下がり情報が「潤沢」になった現在、「(潤沢な)情報はフリーになりたがる」という本書の言葉にも表れているように情報がデフレ化することは当然のことなのである。
 インターネット上でいち早くニュースのフリー化は始まってしまった。ニュースマスメディアの生き残りの方法とは何であろうか?私の考えでは、新聞社がウェブがなかったころと同じような収入を取り戻すことは不可能である。過去、ニュースを手に入れるための媒体は新聞・テレビなど一部のマスメディアに限られていた。人々は確実な情報を手に入れるために情報をお金を払った。確実さ、信頼性とは、私人間の噂話に対して、マスメディアだけがもつブランドであった。(時に裏切られる事態もあるのだが)しかし、ウェブがさまざまな主体の情報発信を可能にしたことで、確実な情報発信をする媒体はマスメディア以外にも現れた。そしてまた、人々には多くの選択肢を与え、「人はいつもいつも絶対確実な情報のみがほしいのではない」ということを露呈させてしまったのではないか。ネットの情報の信頼性は玉石混合だが、実は信頼性は目的に応じた分だけあればいい。正式な書類を書くのではなく、人と話す前にちょっと調べたいだけなら百科辞典ではなくウィキペディアで「十分」。みんなとの話についていくなら、新聞を「とらなくても」、ポータルサイトの無料ニュースで「十分」。消費者のニーズに応じたメディアの選択肢というものが、競争力の高いインターネット上にはたくさんある。新聞社が人々にまた背伸びをさせて新聞をとらせるのには、大変な工夫が必要だろう。
 クリスアンダーソンは、「稀少」のものにはひとびとはこれからもお金を払うと述べており、ニュースメディアは自分たちにとって「稀少とは何か」を考えていくことが不可欠だろう。その成功例となりそうなのが、医療介護CBニュースなどの専門ニュースサイトではないか。コモディティ化されてない稀少でニーズのあるコンテンツを作ることが出来れば、マネタイズにつながる道を開くことができるはずだ。新聞社などの旧マスメディアの「稀少」とは、やはり取材に対する資金・設備・人材、そしてブランド力だろう。その稀少な資源をどう使うかが、今後のマスメディアの運命を決めると考えられる。


本書はフリー戦略のみならず、インターネットをどう捉えるべきかという問いにひとつの答えを返す本であり、幅広い人に是非すすめたくなる本だ。

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