2010年5月15日土曜日

【ホンヨミ!】0514②ネットがテレビを飲み込む日【岡本】

『ネットがテレビを飲み込む日』 池田 信夫, 林 紘一郎, 山田 肇, 西 和彦, 原 淳二郎 (共著)

全体の感想としては、通信をカタツムリやカメに喩えたり放送をナメクジやウサギに喩えたりと、できるだけ平易な表現で説明する試みがなされていたことに好感を覚えた。

また以下に示す通り本全体として話の流れがわかりやすく、初学者にも、あるいはこれまでの流れを整理したい人にもふさわしい本となっていたように思う。

本書はざっくりと
通信と放送の融合は必然である→実際こんな形で融合がすすみ、分業が進むところはこのように進むと考えられる→だが現実にはそのようにいかない。なぜならこんな法制度の壁があるから→ではメディアはどうなっていくか?

といった感じで進んでいくのだが、途中一章だけ「ジャーナリズムはどう変わるか」という、それ以外とはやや趣を異にした章がある。ことさらに新しいことは正直言って取り上げられていないのだが、ジャーナリズムに興味のあるものとしては考えさせられる章だった。少なくともメディアスクラムとか発表ジャーナリズムといった体たらくをいつまでもやっているようでは、新聞業界その他は衰退の一途をたどるのだろう。ステレオタイプな批判はしたくないが、記者クラブしかり、既得権益だけではやっていけない時代にどんどんなっていく。

本書を読んだ限り、ネットがテレビを飲み込む日、は技術的には決して遠くない(といっても完全に飲み込むようなことはなく、多様化が進むだけだということは本文でも述べられているとおり)。しかしそれを阻む法制度がかなり曲者のようだ。さまざまな利権が複雑に絡み合った、通信と放送の境界線に、いかにして新たなメディアは食い込んでいくのか?

まぁ既得権益とは言うものの、いままでは脅かされ「さえしなかった」それが、歴史的な観点から見るといかに急速なペースで脅かされてきているか。そんな視点を持てたことは収穫だったと思う。

メディアのこれからを学ぶにあたって、特に導入本として最適な一冊。

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