2010年5月9日日曜日

【ホンヨミ!0514①】パラダイス鎖国【高橋】

パラダイス鎖国~忘れられた大国・日本~ 海部美智(著)

日本史をつまんだことある人ならピンとくるキーワード「鎖国」。世の中で流行るようなキャッチフレーズを編み出して自身のブログ("Tech Mom from Silicon Valley" http://d.hatena.ne.jp/michikaifu/)に載せているだけあって興味をひく面白い言葉が本の随所に並べられている。個人的には「内なる黒船」という表現がとても印象に残っている。
まず、著者はアメリカで生活のほとんどを送っているからか、日本の社会に精通しつつもその問題点を指摘し、アメリカにおける成功例などを用いて比較検討を行っている。なるほど日本は住みやすいのだから、わざわざ言葉や生活文化の違いがある海外で住む必要はない。その考えが徐々に浸透しつつある日本社会を「パラダイス鎖国」と名づけて警笛を鳴らしている。
たしかに日本は親切で便利なシステムが多いし食もおいしいし生活しやすい国だ。しかし、グローバルな今の時代、他の国のことを知らずに批判的であったり無関心であることは最早時代に逆行しているとしか思えない。何をとっても他の国との繋がりは切っても切り離せない。そんな中あえて日本国内だけですべてを済ませようとすることはまさに「鎖国」状態になってしまいかねない。日本では異質な者を排除する風潮が強いが故に「内なる黒船」は認められるどころかねじ伏せられてしまう。革命を起こす存在を求めているかのようにみせかけて未だに保守的なのだ。
「企業が買収される=負け」というようにマイナスに受けてめる人が多いのも浅はかな知識故の考えなのだということを本著を通して知ることができた。
自分は日本がパラダイスだとは思わないが、リスクがある人生よりも安穏と暮らす方を選ぶなら日本を選ぶだろうなと思った。しかしそれはもう時代にそぐわない考えであり、変化を恐れるのではなくその流れに果敢に乗り、あわよくばその流れを作るほうに自分がなっていく。そういった姿勢こそが大事なのだと感じた。「内なる黒船」になりたい。本著を通じてそう思った。

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