2010年5月7日金曜日

【ホンヨミ!0507①】コミュニケーションをデザインするための本【田島】

コミュニケーションをデザインするための本 岸勇希

本書には、近年広告界で注目される「コミュニケーション・デザイン」というアプローチを、電通の広告マンである筆者が実際に行ったプロモーションを具体例として紹介する本である。
メディアの発達によって、人々に情報の氾濫と過剰な選択肢がもたらされたことは本書のなかで繰り返し述べられている。広告会社の在り方が「トータルコミュニケーションサービス」へと転化していっているのは、単に広告を打つだけでなく、ユーザーのコミュニケーションに自然に入り込まなければモノが売れなくなっているためである。
今の時代に成功する広告を作るには、言い換えると、あらゆる他の選択肢に勝ちユーザーの時間を確保するためには、「どのような価値の情報」を「どこで見せるか」の二つの観点が重要ではないだろうか。価値に関して、岸氏は、広告である無しに関わらず最終的に勝ち残る価値は2つに集約されると言っている。「圧倒的にオトク」と「圧倒的に面白い」モノである。これは昨年度jekiコンペティションに参加したときに私自身も痛感したことである。近年の広告は必ずどちらかに分類できる。
 また作り出した価値を「それをどこで見せるか」に関しても、2つの効果的な方向があるだろう。ひとつは既に人だかりができている掲示板に広告を出すことである。プラットフォームサイトが「採算よりもまず人を集めろ」と言われるのは、集客力がすなわち広告価値になるためである。しかし人気のある掲示板はもちろん競争がある。そこでもう一つの方法が、掲示板が立っていないけれど人が集まっている秘密の場所を見つけて、掲示板を作ってしまうことである。「タダコピ」は、大学生が集まるコピー機を広告メディアとして発見した好例である。筆者は「場所とメッセージを切り離してはならない。場所からメッセージを逆算しろ」と主張する。ならば、購買と密接にかかわるコミュニケーションをマネジメントする広告会社が、商品企画に関してコンサルティングを行うこともこれから必要になってくるのではないか。

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