2010年5月7日金曜日

【ホンヨミ!0507②】すべては一杯のコーヒーから【岡本】

『すべては一杯のコーヒーから』 松田公太

人は誰しも想像力と創造力を持って生まれてくるのだから、「夢」と「目標」のどちらが欠けても勿体無い-本書はこんな文句で始まる。
他のコーヒーショップ日本法人と違い大資本がバックにつかなかったタリーズジャパン。僅かなノウハウと資金でいかに今日の成功を掴んだか、「自分の立てた目標に向かい、使命感と情熱を持って歩んできたから」そう筆者は語る。思い立ったら即シアトルに飛び、2日で50店舗を回り、可能な限り経営者とのコンタクトを試み、挙げ句めどもないのに本職を辞めた行動力には、本当に目を見張るものがある。
幼少時代から話がとことん順を追って続くのはやや冗長だが、かなり面白い経歴だ。敢えて経営論としてではなく自伝的な書き方をしているのは印象深い。人物の紹介も同様に少し冗長だが、他己紹介を通して彼自身の人柄も垣間見える。
常にポジティブにという彼の生き方は見習いたいと感じた。もちろんただ馬鹿であるだけではいけない。自分が精一杯やっているという自負があるからこそとれる態度でなければ。筆者はそれがあるからこそポジティブでいられる。
銀行での営業経験から得たという教訓も大変参考になる。例えば、最初から意志決定権を持った人に話を付けるというやり方。彼のやり方は本当に見ていてヒヤヒヤするほど大胆だが、一方で非常に効率のいいやり方だと感じる。「詰め」が一番重要であり、最もエネルギーをかけるべきところというのも、銀行の営業経験がある彼ならではの持論。
最初は1年契約。1年で結果を出すことが求められる中で、彼が何を感じ、何を学びながら成功し、また時に失敗したか。ビジネスの世界で一定以上の成功を収めた筆者は「まだまだ道半ば」という。山登りでたとえるならばまだベースキャンプも視界に捉えられる程度、と。止まることを知らない筆者の向上心には恐れ入ってしまう。
なぜシアトルに「スペシャルティコーヒー」文化が根付いたか。コーヒー作りはどこに優劣の差が出るか。成功のコツや経営者としての資質がどんなものか分かるだけでなく、ちょっとコーヒー通にもなれる一冊。

0 件のコメント:

コメントを投稿