2010年5月7日金曜日

【ホンヨミ!0507②】ウェブ2.0は夢か現実か?【矢野】

『ウェブ2.0は夢か現実か?』佐々木俊尚

ウェブ2.0時代が来たと囃され、ライブドアの堀江氏やソフトバンクの孫氏をはじめとするネットビジネスが隆起した2006年に刊行された本である。4年しか経っていないのに、内容に少し古さを感じた。それだけ昨今のウェブ事情が目まぐるしく変化しているということだろう。

本書は、フリーのジャーナリストである著者が(当時は若干「新しかった」であったであろう)「ウェブ」の持つ力とそれを取り巻く環境がどのように変わっていくかに詳しく言及している。

特に各国のウェブ事情が異なっていることが非常に興味深かった。韓国はインターネットがオールドメディア(新聞や雑誌など)を凌駕する力を既に持っており、2002年のワールドカップ、2006年の大統領選挙共に多くの国民をネットが動かしている。この背景にはオールドメディアの報道に対する政府の規制の厳しさと、そのフィルターを通した報道への人々の不満が伺える。アメリカでは政治、宗教、思想等を意見交換・批判する「論壇」の役割があるという。筆者曰く日本はというと、「2ちゃんねる」をはじめとする「終わりなき退屈な日常を過ごすために生み出した文化」なのだという。著者も本の中で引き合いに出していた「下流社会」との照らし合わせは、私も読んだことがあったため非常に納得できた。もはや現在の日本におけるインターネットは、お金のかからない娯楽なのである。ネット上で真剣に檄を飛ばすもよし、世論の反映もまた然り。しかし、私は日本ではそれよりもただ「空白の時間を埋める」「アクティブな人間の足元をすくう」という、全般的な社会活動から一歩手前に引いて客観視することを楽しんでいる人がとても多いと思う。ITというよりITに対する意識のガラパゴス化も進んでいるのではないかと気にかかった。

また、ウェブでのサービスを提供する企業に関しては、システムのハッキング・顧客情報漏洩等が起こったときに責任の所在が不明瞭になることにも気付かされた。実際にあった例を挙げて筆者はサービス提供会社が情報提供してくれたがこの辺りは少し法を勉強せねばならないと感じた。

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