2010年4月30日金曜日

【ホンヨミ!】0430① グーグル・アマゾン化する社会

『グーグル・アマゾン化する社会』 森健


多くの企業や個人でさえもネットに広告を出し、不特定多数がネットで簡便に商品の売買を行えるようになった現代、利益もより多様な人間に渡るようになったと考えるのは自然なことと思う。だが実際は「多様化が進む反面、ひとつのところに情報やおカネが集中する結果となっている」、そう著者は語る。


日本基準と世界基準が必ずしも一致するわけではないが(日本ではYahoo!が流行り、世界ではgoogleが圧倒的など)、1位と2位以下の人気の差を見るに、「実は消費者は多様化をそれほど必要としていないのではないか?」そう思わざるを得ない結果となっている。一つのジャンルで成功を収めようとするなら「後乗り」ではまず勝てない。先んずれば人を制す、それがウェブだということが、あまりにありありと示されていて驚く。


Amazonやgoogleがなぜこうも成功したか。一つにはやはり「誰もやらなかったことをいち早くやった」ことがある。Amazonの設立当初、投資機関は「まったく興味を示さ」なかったというのだから、ウェブ社会で成功する企業がいかに新奇性、意外性に富んでいるかがわかる。要するに、新しすぎて時代がついてこれない。一方のgoogleは「他サイトから多くのリンクが貼られているページほど重要度が高い」という「ページランク」システムが新しく、また圧倒的な支持を集めた。


もう一つには「ニーズをいち早く嗅ぎ付け、実現し続けた」ことがある。長くなるので詳述は避けるが、検索エンジンというジャンルで見ればむしろ「後乗り」のgoogleが成功を収めたのは、「ページランク」の新しさはもとより、基本無料のアプリケーションなどユーザーの支持を獲得する様々な方策を高い技術力で実現してきたことにもある。


いずれにしてもスケールフリー・ネットワーク(分散されていながら自立的に拡大していくネットワークの仕組み)では「新しいことをやらなければ勝てない」ことを強く実感した。どんなビジネスでも当たり前の原理だが、制度的に一極集中が起きやすいウェブというシステムの中ではその「当たり前」が重要度を増す。ウェブ上の専売特許は、そう簡単には揺るがない。


そう考えながら読んでいると、殊更に目新しいシステムもなく「世界一の検索エンジンにする」などとのたまっている中国の某検索エンジンが急に馬鹿らしくなった。

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