2010年4月30日金曜日

【ホンヨミ!】0430② 新しい中国人―ネットで団結する若者たち

『新しい中国人―ネットで団結する若者たち』 山谷剛史


本書は、現代中国のインターネット社会について「若者とインターネットの関わり方」「インターネットから見た中国における日本」「中国におけるネショナリズム(ネットにおけるナショナリズム)」の三つの視点から分析を行っている。

本書の優れている点は、多くの中国研究本のように、一部ニュースを取り上げて曖昧で抽象的な分析を加えるのではなく、中国在住のITライターである筆者が自身の実体験をふまえて分析を行っている点である。

また、複雑で入り組んだ中国のインターネット社会(中国だけではないが)を傍観者としてではなく、利用者としての立場から分析している点も新鮮だ。

本書の内容を要約すると「現代の中国では、インターネットの普及が若い世代の行動様式に大きな変化を与えており、その影響は日本にも及ぶ。」とったものになるであろう。


まず、第1章「インターネットと中国の若者たち」では、中国におけるインターネットのメインユーザーである若い世代のインターネットの利用形態についての紹介がなされている。ここで紹介される利用形態は一見すると未成熟で著作権など多くの問題をはらんだものであるが、同時に中国のネットワーク社会はまだ発展途上にあり、大きな可能性を持っていることを示している。

2章「日本を意識する若者たち」では、中国における日本製IT製品の評価やネット社会における日本の評価についての分析が示されている。この章を読んで一番強く感じることは、中国の若い世代が日本に対して憎悪と憧憬を同時に感じているということである。その憧憬をうまく利用することがうまく利用することが、日本企業が中国で成功するための最も重要な要素であると私は考える。

3章「ネットで団結する若者たち」では、前2章で紹介した若者のインターネットの利用が彼らの行動様式に与えた影響について述べられている。この章では、前世代の中国人と思考や行動が大きく異なる新しい世代の出現と、彼らの性質についての分析がなされている。この世代は何れ中国社会において重要な役割を担うようになる。そして彼らについて知ることが今後の中国社会を理解するうえで不可欠であると強く感じた。


政治学の中には、政治の普遍的な原理を研究する分野(行政学や政治社会論など)と共にある特定の地域の政治現象をその地域の文化的・社会的特徴を踏まえて限定的に分析する「地域研究」と呼ばれる分野がある。「地域研究」の方がその地域の特異な現象をうまく説明できる場合も多い。

同様に、日進月歩する技術が社会に与える影響について考える時も、その普遍的な影響を考えると同時に、地域に着目したミクロの視点も併せもつ必要があるのではないだろうか。

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