2010年4月30日金曜日

【ホンヨミ!】0430② ウィキノミクス

『ウィキノミクス』 ドン・タプスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ(著) 井口耕二(訳)


世界経済の安穏が根底から覆され、日々刻々と先の見えない変化を続ける現代において、もはやかつての「常識」は淘汰されてきている。雇用しかり、企業内の秩序形成しかり、需給関係しかり。だが社会は常に多くの不幸という土台の上に幸福が重なるヒエラルキーを描く。「常識」にしがみついた多くの企業が「常識」そのものと共に淘汰されていく一方で、それを尻目にやはり少なからぬ企業が未曾有の成功をものにした。


両者を分けた要因とは何か?答えは勿論一つではないだろう。それでもきわめて示唆的な「答え」が本書にはある。


マスコラボレーション、ピア・プロダクション。企業の明暗を分けたこの二つの要因について、誰もが耳にしたことがあるだろういくつかの成功企業(失敗例について言及がない+成功例をいいように書き過ぎな感も…)を例に明快に書かれている。


本書で言及されているのは企業同士のコラボレーションだけではない。今まで供給を受ける一方だった消費者が今や生産消費者(プロシューマー)となり、それが企業とのつながりで思わぬ成功を生み出した大変面白い事例についても記述がある。


今まで経済循環の輪の中にほんの少し、かする程度にしか触れられなかった消費者が、WWWの登場によって無限の可能性を持った生産者を兼ねることになった。生産者と消費者を隔てる壁はもはやなく、今やサービスを享受するばかりの消費者では、今まで同じ土俵にいたはずの他の消費者にすら出し抜かれる時代。他に出し抜かれる可能性は、同時に他を出し抜く可能性をも含意する。そう考えながら本書を読むと、一消費者としてはワクワクを抑えられなかった。


我々学生とて決して例外ではない。しがない一学生でさえも、プロと名のつく集団と同じフィールドで闘えるのが現代だ。先人が思い描いた知識集約の場、ウェブ―。この恵まれたフィールドを享受しない手はないことを再確認させられた。


競争の時代から協創の時代へ―次代の主流が垣間見える一冊。



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