2010年4月29日木曜日

【ホンヨミ!】0430①ジャーナリズム崩壊【矢野】

上杉隆「ジャーナリズム崩壊」

「日本にジャーナリズムは存在するか?」で始まるこの本は、
日本の閉鎖的な記者クラブ・日本のジャーナリズム制度批判を綴ったものである。
筆者はNHK報道局勤務、鳩山邦夫議員秘書、ニューヨークタイムズ記者を経て、現在フリーのジャーナリストとして活動している。
筆者はアメリカのジャーナリズムと日本のジャーナリズム(主に新聞社・テレビ局)を比較して主に次の2点を批判している。

まず、閉鎖的な記者クラブの存在。外国人記者やフリーランス記者を蚊帳の外に出し、自分たちも時に政府等の国家権力側に寄り添う。
次にジャーナリストであることよりも先に立つ「会社員」であるという意識。
「出る杭」になることを恐れ、スクープを取ろうとはしない。
一貫してあいまいな立場でいようとするから、記事に関する責任の所在が明らかでない。

逆にアメリカの新聞では、事実関係の報道は通信社が行い、新聞社はもっと主張を以て報道するという。
また、新聞社は報道側と経営陣の間に隔てがあり、経営側が加味しない分自由な報道ができる。
ほぼ全ての記事に署名を載せることからわかるように個人としてのジャーナリスト意識もずっと高いようだ。

筆者の意見に共感できるところは多くあった。
私たち一般市民には知る権利があるのだから、権力に寄り添った日本の報道は良くないと思う。
筆者の言うようにもっと会社や自身の立場のため、ではなく読者視点で記事を書いてほしい。

しかし私はこの本を読んでいて若干の疲れを覚えた、というのが正直なところだろうか。
主張が強すぎる。ここまで終始批判を続けられると、逆にアンチテーゼに思考が及ぶ。
実際ニューヨークタイムズ誌の記事をいくつか読んだが、そこまでタイムズ社の記者の主張は感じられなかった。
確かにジャーナリスト視点だとアメリカで働く方が面白そうだし、記事も日本で言う週刊誌の要素があるらしく、そそられる。
しかし、やはり日本の客観報道(これが客観ではないと筆者は言うのだが)も必要だと思う。

それでも、記者クラブに今存在している様々な矛盾は取り払うべきだと私も思うので、
日本のジャーナリズムを「崩壊」して新規立て直しを図るのでなく、
海外のよい部分を取り入れて、読者のことを考えた「ジャーナリズム成長」を期待したい。

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