2010年4月29日木曜日

【ホンヨミ!】0430②新世紀メディア論【黄】

ウェブ時代に突入した今、新聞社の業績不振や雑誌の相次ぐ休刊など出版業界は大きな壁に立ちはだかっている。
はたして出版は今後生き残るのだろうか。メディアはどこに向かうのか。

筆者は、私たちの知っている出版は21世紀の出版じゃない、と断言する。そもそも、私たちの認識する出版、つまり、全国にばらまく紙媒体の雑誌や書籍、新聞しか指してない出版は既に死んでおり、これを踏まえたうえで、新たなバージョンの出版は、その価値を増大させながら続いていくと言う。ここで印象に残っていた筆者の言葉として、

「冒頭にも書きましたが、わたしは紙のメディアは銀塩のフィルムカメラに似ていると思います。書店は中古カメラ屋さんのようになるのかもしれません。最新の刊行物を並べる書店は量販店化していくでしょう。そして、フィルムカメラが廃れ、デジカメが全盛のいま、紙の本は中古カメラのように稀少品に近くなると思います。」

既存の出版にしがみついてる層にとっては耳が痛い一言。しかしながら、著者はさらに踏み込んで、今後の出版は「情報商社」としての位置を確立すべきだと主張し、そこには、商売のネタが考案されるプロセスは多様であるという前提が含まれている。

さらにもう一つ本書で繰り返し強調されていたこと。それはコミュニティの重要性。コミュニティの価値は特定の読者に対して情報を提供し、コミュニティを組成したとき始めて作られる。また雑誌の価値一つをとってもそれは、記事によってでも編集者によってでもなくその雑誌を取り巻くコミュニティによって決まるのだ。
過去に自分が愛読していた雑誌を振り返って見ると確かにそのとおりだと思った。
ツールがコモディティ化し、ツール・機材に関してはプロとアマの差が無くなってきた現在。デジカメなどもプロが使う機材とハイアマチュアの機材では機能的にはほとんど差が無くなったと思う。そんな中、メディアは今後どこへ向かうのか、どんな可能性をひめているのかを専門的知識を交えながら綴った作品である。

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