2010年4月26日月曜日

[ホンヨミ!]0430①現代日本の思想[矢部]

現代日本の思想-その五つの渦 久野収(著) 鶴見俊輔(著) 

1950年代というのは、たくさんの思想家がいて、各々が独自の思想というものを持っていた。最初に書かれている「白樺派」について。「新しい村」という枠組みで、彼らは、社会・芸術運動を繰り広げていく。著者は、思想というものを、現在進行形で現実に今何を起こすかということと考えており、過去にすでに起きた事象を抽象的にとらえるものではないと考えている。

これに基づき、本書は鶴見俊輔と久野収の共著である。鶴見俊輔は一貫として、日本共産党を批判している。その首尾一貫している批判は、政府や軍の徹底的な弾圧があり、加えて、社会から鶴見の思想というものが理解してもらえないという状況にあるにも関わらず、曲げられることは一切なかった。天皇制批判を続けてきたのだ。

そして、この本の最後に書かれている重要な点が、「実存主義(日本)」についてである。これはとても難しい言葉であるが、説明しようと思う。:非合理的に、具体的に個性や主体(主観)性を持った人間存在(実存)そのものを重視する思想。実存主義の後に括弧をつけたのは、実際、西洋では19世紀末から流行していたからである。
鶴見はこの実存主義の時代を、この本が書かれた1950年代半ばと考えて、論じているが、実際の思想界での実存主義というのは、戦後復興興隆期の1970年代初めと考えられている。鶴見の当時の考えを知ることはできないが、鶴見が、冷静に淡々と述べる文章には何か根拠があったのかもしれない。

この文章での鶴見の批判の仕方は、とても論理的かつ明晰で、客観的に的をピンポイントで射ているものばかりである。これは、現在でも通用する捉え方ばかりである。鶴見の物事を考える角度にはとても驚かされた。人々を動かす思想ということでは、これからの日本にも必要不可欠ではないのかと思うこともしばしばあった。

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