The cuban missile crisis /Don Munton・David A welch
国際政治学者ウェルチらによる、キューバ危機に関する学術書である。
近年旧ソ連やキューバのドキュメント(書類)の調査が進み、キューバ危機は全面核戦争をまさに紙一重で回避していたことが明らかになった。ケネディとフルシチョフの間では、強気な態度を崩さず、かつ最悪の結末も避けるという、何手先も読んだギリギリの攻防戦が行われていたように思われる。しかし本書によると、当時の米ソ連キューバはEmpathy(相手が何を考えているか把握すること)に欠けていたらしい。例えば、ソ連はキューバにミサイル基地を置くことに対し、アメリカがそこまで反応すると思っていなかったようだ。アメリカもトルコにミサイル基地を持っていたため、そこまで反発は大きくないと思い込んでいた。キューバ危機は、このように各国のempathyの不足により未曾有の事態に発展したとウェルチは指摘する。
グローバリゼーションが進み、国家間のempathyはキューバ危機の時代よりとりやすくなっただろうとウェルチは言う。しかし、先日の尖閣諸島問題における日本政府の外交を見るとそうも言えないのかもしれない。日本政府は中国から譲歩を引き出すこともできない中途半端なタイミングで船長を釈放し、日本人社員の人質問題などを解消しえる交渉カードを手放してしまった。中国政府は共産党の支配下にあり、国際社会の法規に基づいたempathyが多少とりにくい国であることは間違いないが、もう少し相手国の出方をシュミレーションすることができたのではないかと思う。キューバ危機時より核戦争のリスクが幾分か下がった現在だが、外交のスキルが重要であることは変わらない。平和を維持することはもちろん大事だが、もっとEmpathyを行い、利益不利益を意識した外交も語れるようにしなくてはならないと思う。
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