2010年6月7日月曜日

【ホンヨミ!0604①】パラダイス鎖国【矢野】

パラダイス鎖国 海部美和

日本について改めて考えさせられるような本だった。日本の中から日本を考察する「日本辺境論」と好対照に、アメリカ在住経験の長い筆者からの日本への数々の指摘が刺激的だった。
日本は豊かさに慣れすぎた、とはよく言われることだが、この状態から脱出するために一人一人が少しずつ変えていこう、と筆者は言う。こう書くと至極当たり前のことのようだが、筆者の例を多く用いた説明により「確かにそうだ」「それしか道はないな」と頷けた。筆者はシリコンバレーを引き合いに出している。シリコンバレーには「プチ変人」がたくさんいてそういう人々の内なる力によって全体が変わってゆく。日本もこのようにあるべきだ、と。しかし日本的視点でいえばこれは難しいことかもしれない。人の意見に迎合、付和雷同しがちな性質はもはや日本人の「お国柄」とも言えるからである。しかし、日本人も進んで「変人」にはなれなくても「プチ変人」にはなれるかもしれない。本当に「一人ひとり」の大切さがよくわかった。そして自分もそのうちの一人なのだということを考えさせられた。
また、筆者によれば、日本は事業自体の是非が論じられないものには進んで飛びつくが、論議の分かれるものに関しては発展が他の国よりかなり遅いという。敷設したほうがよいブロードバンド、ネット回線事業には飛びつき、日本のネット普及率は9割を超す。しかし、著作権の問題が浮上するコンテンツ産業は国際的な競争力を持たない。これは先日の福井さんのお話とも非常に関連していて興味深かった。筆者も福井さんと同様、「著作権は考え続けねばならない法律」と述べている。
また、新規事業を興すことに日本はわりと臆病で、パトロンが少ない。そのことを筆者が「ぬるま湯にあずかろうとする人が少ない」と表現していたのが非常に印象的だった。
日本を色々な切り口から見ていくことで理解が深まり、面白いと感じさせてくれる一冊であった。

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