2010年6月11日金曜日

[バンナム!]②欠点を逆手にヒットを生む[矢部]

日経ビジネスアソシエ 2009年04月07号

「欠点を逆手にヒットを生む」

 これはナムコナンジャタウンについての記事である。
オープンから13年、衰えない人気を誇るテーマパーク。
逆転の発想とライバルの分析がロングヒットの秘訣だ。
 東京・池袋「サンシャインシティ」内にある「ナムコ・ナンジャタウン」は、年間来場者数216万人の人気テーマパーク。この不況の中でも客足は一向に衰えていない。
 ナンジャタウンの構想がスタートしたのは、1990年代前半。開発を指揮した池澤守さんはサンシャインシティの立地に魅力を感じていたが、「天井が低い」という難点があった。そのため、乗り物を使う派手なアトラクションが入らない。「それでもやると決めた。どうにかなるだろうし、どうにかしてやりたい気持ちもあった」と、池澤さんは話す。
 企画会議は難航した。チームのメンバーから出てくるアイデアは「派手なアトラクション」ばかり。だが、それは実現できない。池澤さんは、この案件をしばらく寝かせ、国内外の人気の「遊び場」をくまなく見て回ることにした。
 手がかりは、米ハリウッドのショッピングモールにあった。通路から時々、噴水のように水が噴き出し、周りで子供たちがはしゃいでいる。そこで、ひらめいた。
 「道が使える」
 テーマパークはアトラクションという「箱」と、それらをつなぐ「道」から構成される。それまで「箱」のことばかりを考えていたが、「道」を工夫するのも手だ。
 池澤さんは「道で遊ばせる」ために2つのコンセプトを打ち出した。1つは「3歩歩けば、遊びに当たる」。例えば、レトロな街並みの中にあるレコード屋さんの看板を押すと音楽が流れる。そんな仕掛けを数百個詰め込んだ。もう1つは「街巡り型アトラクション」。探偵になって事件の証言者を探すといった、パーク全体を歩き回って楽しむタイプのアトラクションを揃えた。
 96年にオープンしたナンジャタウンは一躍、人気を集めた。
「なぜ」追究してヒアリング
 だが、3年ほどして、客足が鈍り始めた。
 「1600円という入場料が高すぎるのでは」という声を聞いた池澤さんは、「高いと感じるのは、なぜだろう」と考えた。
 周囲の人たちにヒアリングしたところ、休日にショッピングセンター(SC)で遊ぶ人が増えていることが分かった。SCは入場無料。もちろん買い物はするが、それは「必要なモノ」だから、「ムダ遣い」の罪悪感は薄い。
 ならば、ナンジャタウンでも入場料を思い切って下げる代わりに、生活に必要な消費を取り込んだらどうか。そんな発想で生まれたのが、2002年、ナンジャタウン内にオープンさせた「池袋餃子スタジアム」だ。全国の有名餃子店が軒を連ね、食べ歩きが楽しめるうえに、店が入れ替わるので飽きない。これが当たった。
 オープンと同時に入場料を300円に値下げしたこともあり、来場者数は2倍近くに急増。入場料引き下げに伴う売り上げダウンは、客数増と餃子の販売による売り上げアップが補ってくれた。
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社会が一般的に注目するところではなく、発想の転換で、思いもつかない箇所にスポットを置くのはプロの眼だなと思った。そして、客足が途絶えていると感じると、すぐに分析をし、このナムコの社員の方の云う「why?を5回繰り返す」という重層的な考え方が、しっかりと本質を見抜いていて結果にもつながっているのだなと感じた。しかし、このことは実に難しく、本当に生の現場主義という体制をナムコの社員の方々がとっているからこそだと思う。なぜならば、このように客がSCにとられているから、入場料というファーストステージでは、仕切りを低くして、SC手法のように、「中」で遊べて、無駄ではなく楽しいもしくは必要という顧客のニーズを満たすことができているからだ。改めて、現代ビジネスは、需要者と供給者のニーズをどれだけ満たせるかだと感じた。

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