2010年5月21日金曜日

【ホンヨミ!】0521①グーグル革命の衝撃【岡本】

『グーグル革命の衝撃』 NHKスペシャル取材班

何というか、ものすごい本だった。今まで読んだどんな本よりも「Googleという謎」に肉薄した内容だったと思う。NHKの取材班に感服。

そしてその史上もっともGoogleに肉薄した(と自分では思った)本であってもやはり謎を解明しきれない、このGoogleという組織の途方もなさも同時に感じた。

会社のシステムの説明一つとっても社員の声が多く載っていて、Googleの創業者が育まれたスタンフォード大学の取材では、「二人は周りの学生に比べて明るいだけでなく、徹底的に議論をし、深夜まで粘り強く研究する学生だった」という彼らの恩師の言葉が印象的だった。とにかくGoogleという10年ちょっとで時価総額18兆円の巨大企業となったこの組織に多面的に光を当て、一冊の本としてまとめあげる労力は一人ではとても成し遂げられないものだ。本当にすごい。

Google幹部などの取材で感じられたのは「何ができたら楽しいか、利用者が真に何を求めているのか、どうしたらそれを早く提供できるのか」をひたすら追い求める、恐ろしいまでの情熱だった、といったような記述が本文中にあるのだが、これが次々と魅力的な新しいサービスを生み出すGoogleの真髄なのかもしれない。

Googleの職場は独特かつ、福利厚生が素晴らしいというのは知識程度には知っていたが、実際凄い職場だ。何であっても「楽しまなきゃ嘘」といった社風が「何ができたら楽しいか」というユーザーフレンドリーな視点を生み、それが数々のサービスを生み出しているのだと思うと、そのような環境を創業時からの理念としていたというセルゲイ・ブリン、ラリー・ペイジ両人の慧眼には驚く。

そしてそんな一見すると「いつ仕事をしているのかわからない(取材班談)」人々が、実は徹底した実力主義の中に置かれていることを本書は指摘する。「すべてが整然とし、自由なようで、しかも激しい開発競争が繰り広げられている不思議な世界」というのは、そんなGoogleの不可思議さを如実に物語る表現だ。

多角的に、かつ初学者でもわかるように、広範なインプットができる点もこの本が良書と言える理由の一つだが、本書の白眉はGoogleの在り方に至極的確な疑問を投げかけているという点にこそある。今まで読んできた本というのはGoogleの素晴らしさばかりが目につき、「Googleの回し者か」と言いたくなるような本が多かった。だが本書のⅣ・Ⅴ章ではGoogleの思い通りに事が進んだ結果、人々はどういう損害を被るのか、その点について多くのページが割かれている。

謎の巨大IT企業Googleにとことん肉薄したのみならず、「あのGoogleだから、きっと大丈夫」といった思考停止を避ける目線を提示してくれる良書。

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