『クラウドソーシング』 バリー・リバート、ジョン・スぺクター他
本書はクラウドソーシングについて書かれたものである。ところで、実は意味を知らないビジネス用語第一位にも選ばれたことがあるクラウドソーシングの概念に関してだが、簡単に言うと一人で考えるよりもインターネット等を通じて皆でアイデアを出し合った方が知的生産力が高まるということだ。表題にもあるようにWe are SMARTER Than MEということである。
各章において、商品開発から販売促進までざまざまな段階において大衆のアイデアが取り入れられた例が述べられており、どれも興味深いものであった。それらの例を読んで感じたことは、アイディアを考察する際のプラットフォームとなるコミュニティーを上手く管理できるかどうかが結果を左右するということだった。いかにして大衆に刺激を与えて活気づけるかということは基本的なことではあるが、実際にそうするのは難しい。そうして開発された商品の例のひとつに、味やラベルなど商品に関するあらゆる要素をネットで集められた意見に基づいて作られた地ビールがあった。これは従来の商品開発とは全く異なるビジネスモデルだ。この例はマーケティング、商品開発、プロモーティングの要素を同時に行えている点でも優れていると思う。もっとも市場に受け入れられそうな商品を生み出せるだけではないのだ。
はじめて、クラウドソーシングについて知った時に思ったことは、どの企業もクラウドソーシングを用いるのであれば、そこから生み出されるものは大衆のアイディアを生かすゆえにどれも似通ったものになるのではないかということだった。莫大な量のアイディアの平均をとっていけばどれもが、その時代の流行を反映した標準的なものになってしまうと考えた。だからこそ、クラウドソーシングにおいて重要となるのはコミュニティーで生み出される大量のアイディアに圧倒されてしまうのではなく、そこから有効性の高いものをピックアップし、最終的には数人の人間がまとめ上げることではないかと思う。
これまでは、独創的なアイディアは天才的な一人の人間が生み出すものだと考えてきたが、大衆がもつ力に気付かされた。同時に、ネットが持つ、人と人、アイディアとアイディアを結び付ける力の凄さを再確認できた。
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