『日本辺境論』 内田樹
本書では、日本人とは何かといった非常に大きな問題が議論されている。
その定義として挙げられているのが、辺境人という概念だ。欧米から見れば日本は地理的に端に存在することになるが、そういった地理的境遇ばかりでなく、日本人の思考習性として絶対的な真理はどこか外にあると考えることも辺境人たる理由として述べられる。自らは中心になることなく、たえず外をきょろきょろし、変化を受容するのが日本人の姿としてとらえられている。日本人には外、つまり欧米にたいして劣っており後進国である意識を持つため他国との比較で行動を決定しがちだ。
本書ではいかにも日本だけが辺境であるが如く述べられているが、アメリカを除くほぼ全ての国は辺境に在るのではないかと感じた。というとりも、そのように感じるのが辺境人の性質なのだろうか。
しかしながら、日本人は辺境人であっていいのだとも述べられる。いつまでも他国と比較をして世界標準を追い求めるのではなく、とことん辺境であっていいという意味だ。このことは、日本のコンテンツ産業において特に言えることではないかと思った。ディズニーやハリウッドが作るものを真似したって結局は自らが中心になることはない。ならば、アニメのように日本独自の文化の中で形成されたものを発信すればよい。潔く、自分たちが生み出せるものはこれだと主張していくことも大事だ。一方で、ものづくり大国日本の技術が世界標準とは異なるためにそれを広められていない現状があるように、ガラパゴス化してしまっては本末転倒だ。要は、精神文化的には辺境に位置する存在でありユニークなものを生み出せるがいざ政治や経済などの局面になれば外の変化を察知し、それを受容できる存在になればいいのではないかと思う。それでは、アメリカのように世界の中心になることはできないかもしれないが、日本人が辺境人である故に持つ良さを生かせると感じた。
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